公共施設敷地の所有権等につき、<公共施設であるから登記による第三者に対する対抗力という問題は発生せず、登記は必要ない>という誤解がある。公共施設の敷地を取得して(未登記)工事を完成し、公用開始行為がなされたのちに、当該敷地につき第三者の所有権登記をなされたという場合には未登記で対抗力を有するが、公用開始行為の前に第三者の登記が経由された時には対抗力を有しない(第三者の背信的悪意が認定される場合を除く)。この点の無理解から、全国の自治体で紛争が発生している。公共施設敷地の未登記で発生している事例や裁判を分析するとともに、公共施設の賃借権の未登記でも、敷地所有権の移動が生じた場合に対抗問題が発生する。この敷地の未登記によって、道路等の公共施設の利用への妨害に対する妨害排除請求権の行使にも問題が生じる。本研究では、公共施設敷地や賃借権の未登記等で発生する問題の、ほぼすべてを検討対象とすることができた。 さらに、法定外公共用物の国から市町村への譲与がなされた件で、譲与された法定外公共用物の未登記によって発生する問題とともに、当該公共用物(法的には普通財産にする)を自治体が市民へ売却する場合の問題について検討した。本研究では、この売却をめぐって紛争が発生した自治体が、この紛争に対処するために既存の公物管理条例を改正した事例に着目し、当該管理条例の適用・解釈をめぐる問題を検討した。 そして、当初の研究目的としては想定していなかった<所有者不明土地と公共施設>についても、研究対象とした。公共施設建設のための取得予定土地を、登記簿上の所有権者不明、登記名義人の相続人多数などの理由から取得困難で、公共施設の建設ができないという問題が多発していたからである。このような問題につき、土地収用法の不明裁決制度の利用を含めた検討をおこなった。 2版
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