研究課題/領域番号 |
16K03306
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中山 茂樹 京都産業大学, 法学部, 教授 (00320250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 憲法 / 生命倫理 / 研究倫理 / 倫理審査 / 学問の自由 / 家族 / プライバシー / 自己決定権 |
研究実績の概要 |
臨床研究に対する研究倫理審査について、審査を担う組織の憲法上の位置づけや正統性について考察を進め、次のような知見を得た。 学問活動には公共的に信頼しうる体系的な情報の生産という憲法上の意義があり、ここに「人権」とは異なる学問の自由の保障の根拠が求められる。学問の自由は集団的な学問プロセスが原則として国家から干渉を受けないことを保障するが、研究倫理審査も研究者集団による社会からの負託に応える自律的規律といえる。「生命倫理」という社会現象の出現は、ひとつには専門性の内部的規律にまかせていては被験者保護等が十分に図れず一般社会(国家)の介入が必要だと考えられたことによるが、研究倫理は、規制/自由の近代法的二分法の「あいだ」の公共的規範を形成するものであり、国家の関与の危険性もふまえつつ国家法と協働の関係にあるものとして憲法上考察する必要がある。そのためにはメディア倫理、医療倫理(専門職倫理)、スポーツ倫理などと比較して研究倫理について考察することが有益である。学問的自律性にもとづいて活動する組織はその規律の正統性を自ら調達する必要があり、倫理審査委員会は正当な研究活動についての判断の公開性と説明責任を果たすことにより社会からの信頼を得るべきである。医学系だけでなく市民の常識や異なる専門性を含んだ一般社会の視点をも取り込んで議論する審査こそが、学問共同体が自律的に公共性を担うことを確保する。 また、医療・生命科学研究における患者・被験者の保護にかかわる家族の役割、とくに自己決定能力が十分でない患者・被験者にかかわるいわゆる代行判断などに関する予備的考察として、憲法上の家族の位置づけ、とくに憲法13条が保障する私生活上の自由に含まれる関係的プライバシーと憲法24条の関係について、関係的責任の観念を軸に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究に対する研究倫理審査に関し、審査を担う組織の憲法上の位置づけや正統性について考察を進めることができ、また、自己決定能力が十分でない患者・被験者に関するいわゆる代行判断などにかかわる家族の憲法上の位置づけについての考察を進めることができ、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
憲法13条が保障する私生活上の自由ないし「自己決定権」に含まれる関係的プライバシーと憲法24条が定める家族制度の立法による構築の関係について、さらに考察を進めるとともに、臨床研究法の関係省令等が整備され、同法が施行されたことから、臨床研究法についての憲法学的分析も進めたい。また、これまでの研究成果について他の研究者等とできるだけ意見交換して反省する機会をもちたい。
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