研究実績の概要 |
2019年度は、公法学会での報告依頼を受けたため、行政活動への住民参加の一類型として、日本の水道行政の民間化の動向を検討した。この中で、私人による水道提供として、住民営の水道組合による水道経営を取りあげて、その法的問題を検討した。そして、私人による水道経営を住民自治の観点から正当化することを試みた。この成果は来年度の公法研究に掲載予定である。 他に2019年度に公表した研究成果として、アメリカにおいて裁判判決に行政機関が従わなかった場合の対応について検討する論文の書評、正木宏長「論文紹介 行政機関が裁判所の命令を履行しない時 Nicholas R. Parrillo, The Endgame of Administrative Law: Governmental Disobedience and the Judicial Contempt Power」アメリカ法[2018-2]271頁、および、日本の学会動向についての書評、正木宏長=原田大樹=大橋真由美「学界展望 行政法」公法研究81号(2019)270頁、がある。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、翻訳書、リチャード・J・ピアース・Jr.(正木宏長訳)『アメリカ行政法』(勁草書房、2017)の刊行を通じて、アメリカ行政法の全体構造を明らかしたことが大きい。そして、アメリカの規則制定手続における行政参加に関する理論的動向について、最新の展開を明らかにすることができた。今後は、環境法のような特定の行政分野に注目して、アメリカの規制法の実体と手続を考究していく予定である。
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