研究課題/領域番号 |
16K03309
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中島 茂樹 立命館大学, 法学部, 授業担当講師 (10107360)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 安倍政権 / 大学政策 / シュミット / アガンベン / 例外状態 / 権威主義 |
研究実績の概要 |
イノベーションやグローバル競争国家への対応策としての安倍政権の大学への国家関与は、1大学の專門分野ごとに「強みや社会的役割」などを明確にするとして文科省が原案を作成して各大学に作成させた「ミッションの再定義」、2国が国立大学に配分する運営費交付金の重点配分、3「教育研究の特性に配慮」しての中期目標・計画の策定過程での関与という特徴を有し、この方針に基づいてグローバル人材育成・イノベーション改革に役立つための大学改革、それにともなう文系学部・教育学部の縮小・再編、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化、軍事研究への誘導などが推し進められている。 そこで、こうした大学政策を推進する安倍政権とはそもそもいかなる性格の政権なのか、という観点から、「安倍政権とは何か――『例外状態の常態化』」(日本科学者会議第21回総合学術研究集会編『第21回総合学術研究集会予稿集――科学と社会との緊張関係』〔日本科学者会議、2016年〕72~73頁)を公表した。そして、安倍政権の性格については、「競争的権威主義」、「独裁的民主主義(体制)」、「権威主義的民主主義」、「上からの体制変革」などと指摘されることが多いが、そこでは、シュミット(Carl Schmitt)の「現行の全秩序の停止(Suspendierung)」としての「例外状態」論とアガンベン(Giorgio Agamben)の「統治のパラダイム」としての「例外状態」論を対比的に検討した上で、「例外状態」につき、これを憲法制定権力と憲法によって形成された権力が一体となるような形で、執行権力が法律以外の行政的手段によって統治を行うことを意味するもの、と捉えることができるとすれば、安倍政権による一連の憲法破壊行為は「例外状態の常態化」と称することができよう、と結論づけている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、主として国家・大学間関係の公法学的研究に照準を合わせるものとし、アメリカ、ドイツおよび日本のそれぞれの国において、1知識基盤型経済のグローバル化に高等教育政策はどのように対応してきたのか、2大学に関する憲法および法律上の制度とこれに基づく行政的規制のメカニズムの自由化=大綱化、大学予算の重点・傾斜配分による財政的誘導措置はどのような特徴を有しているのか、3大学の努力義務としての「自己点検・自己評価」は何を目標とし、どのような評価方法・基準設定で行われているのか、ということを柱として検討することとしていた。 上記1に関しては、アメリカ、ドイツおよび日本における国家・大学間関係につき、それぞれの高等教育政策の歴史的展開過程の概略を整理・検討し、それぞれの特徴をおおむね明らかにするすることができるところまできているといってよい。2に関しては、ドイツおよび日本の大学法制と行財政上の関与システムおよび大学評価システムにつき、一定程度整理・検討することができたといってよいが、アメリカについては、資料・文献の収集にとどまり、具体的検討にまで至っていないのが現状である。 なお、わが国の大学構造改革については、とくに安倍政権下における科学技術政策や安全保障・防衛政策、なかでも武器輸出政策の急展開もあって、それらの方策が高等教育政策・大学財政政策とどのように関連し合っているかについて一定の研究の進展を見るところとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
学問の自由と大学の自治ないし大学ガバナンスに照準を合わせるものとし、その際の検討の柱を、アメリカ、ドイツおよび日本のそれぞれの国の大学機構において、1理事会や役員会の構成・役割・機能、学長の選考方法、学長権限と教授会権限(教育研究内容の決定権、学位取得要件の設定権、学位授与権、教員人事の決定権)の関係、大学財政システムなどの構造、2イノベーション政策に重大な関心を持つ産業界・経済団体の大学への関与、3大学の管理運営への学生参加、などがどのような特徴を有しているのかということに設定し、それぞれの国での裁判所の関係判例の分析を含めて検討することにしたい。 とくにわが国については、安倍政権下において、防衛省主導の大学の軍事研究、なかんずく防衛装備庁の「安全保障技術推進研究制度」が大きな問題となっているが、これが、科学者のたんなる「良心」に解消される問題ではなく、「法人化後の運営費交付金は毎年1%ずつの削減」(文科省)と研究資金の「競争的資金」や企業などからの「外部資金」への誘導といった政府の科学技術・高等教育政策と密接に関連していることはいうまでもない。そこで、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が学問の自由および学術の健全な発展と緊張関係にあることを確認した日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月24日)とこれに対する各大学の対処関係について、学問の自由と大学の自治ないし大学ガバナンスの観点から検討することを重点課題として設定することとしたい。
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