平成30年度においても、外国判決の承認執行に関する古典的文献の講読を中心として研究を遂行しつつ、平成29年度において特定された要検証事項について分析を行った。 具体的には、まず、平成29年度に確認された司法と行政の区別の重要性に鑑み、司法判断と行政判断の差違が、司法判断・行政判断の他国における「承認」(他国における効力)に関する考え方に与える影響について、例えば、特許権に関する行政庁(特許庁)の判断と裁判所の判断についていかなる点に差違が認められるのか、といった点の検討を行った。そして、結論としては、一般的な民事訴訟事件判決が前提とする裁判手続における二当事者対立構造や判断者の独立(裁判官の独立)といった要素が、内外国の裁判・判決の均質性・互換性をもたらす点で、そのような要素が必ずしも前提とされない行政判断とは異なる取扱い、すなわち「承認執行」の可能性を認める合理性があると考えられた。 そして、外国判決の承認執行制度の世界的統一については、例えば、対象とする裁判を当事者対立構造や裁判官の独立を前提として下される民事事件判決に限定するとしても、そもそも、そのような前提を世界各国の民事訴訟制度が実質的に共有しているとはいえない点が統一の障害となり、そのような限界を十分に認識した上で、制度統一の検討をすべきことを確認した。 研究年度中にこれらの分析結果を書籍等の形で刊行するには至らなかったが、できる限り早い段階で公表する予定である。なお、具体的な研究成果としては、本年度研究を行った国際司法共助に関して、学会報告及び研究論文の執筆(2019年度刊行予定)を行った。また、外国判決の承認・執行制度についても、研究報告を複数回実施した。
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