研究課題/領域番号 |
16K03325
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 彰 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80205632)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロンドン商事裁判所 / 国際仲裁 / パリ控訴院国際部 / パリ商事裁判所 / 商事裁判所国際フォーラム / Brexit |
研究実績の概要 |
本研究は、世界各国で進行している国際商事裁判所設立の動向を、国際仲裁との相互作用に着目しながら継続観察し、その分析を通じて国際ビジネス紛争解決制度構築のための研究領域形成の端緒となることを目的とする 。平成30年度においては2回にわたり国際商事裁判所の調査を実施し重要な情報を得た。これまでの調査研究に基づいて2つの学会報告を行い2つの論文を執筆した。うち1編は今年度中に公表され、もう一編は本年夏発行の国際商取引学会年報への掲載が確定した。 昨年5月及び本年3月にロンドンを訪問し、商事裁判所と国際仲裁その他ADRとの関係に関する情報を収集した。ロンドンでは商事裁判所の裁判官から国際仲裁をサポートする裁判所の役割とイングランド全体のビジネス紛争に関する裁判所によるサポートについて説明を受けた。商事裁判所国際フォーラム(SIFoCC)のその後の活動状況や日本最高裁の傘下に関する情報を得た。その他に商事紛争を専門とするバリスターの組織(Commercial Bar Association)を訪ね国際建設紛争の専門家から情報を得た。ADR提供機関のCEDR・ソリシターの自治組織(Law Society)を訪問し最新の情報を得た。また昨年5月にパリ第二大学の国際契約法の研究者から情報を得たほか、パリ控訴院に新たに設置された国際商事部に関して政府宛レポート作成に当たった経済団体の責任者からその理由や提言内容について説明を受け、それがBrexitによる影響を強く受けたものであることを確認した。さらに第一審のパリ商事裁判所を訪問し、言語の使用や裁判所に付置された調停手続について担当の裁判官から情報提供を受けた。またICCを中心とした豊富な仲裁人及び仲裁弁護士の経験を有する法律家から情報を得る機会を得た。上記2編の論文はこれら情報に基づいて執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究の進捗状況に限れば、調査において予想以上の成果があり、それらに基づく情報発信と研究成果発表の一部を遂行することができたため、予想以上の進展があった。また、ロンドンにおける裁判所とADRとの連携においても分析がかなり進んでおり、その成果を11月に開催された国際商取引学会において行ウことができた。 他方において、研究開始時から現在までを通じては、これまでに数多く行ってきた各地への訪問調査によって得た多数の情報が一定のまとまりをもったことで様々な側面からの分析が可能となり、研究成果がまとまりはじめたところである。次年度においては、さらに情報の分析を進め、さらに考察を加えることにより、多くの成果を生み出すことが可能となると考えている。 今年度のさらに重要な実績として、ロンドンにおける商事裁判所及びビジネス財産裁判所(Business & Property Courts)との関係や、裁判官が主導するケースマネジメントとADR全体との関係についてかなり分析が進んだことがあげられる。また欧州においてBrexitが国際商事裁判所の設立に関して有するインパクトについてもかなり明確となったことがあげられる。 このように本研究が扱う問題は、当初想定したものを超えた重要な現象であることが確認されたため、次年度以降においてもさらに継続して研究を進めていく必要があることが判明した。そうした点が明確となったことも本研究が正しい方向へと進展してきた結果であると考えられるため、以上の自己評価にいたった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画において本年度が最終年度であり、これまでの研究成果をまとめることに集中することを計画していた。この作業はいずれにしても重要であり、それを着実に行っていく。その他に、本年夏から秋に再度シンガポール及びロンドンにおいて、フォローアップの訪問調査を企画し、ごく最近の進展について確認を行う予定である。 本研究がその主対象として取り上げてきた国際商事裁判所と国際仲裁との関係は、広い視野から見ればグローバルレベルでのビジネスの急速な展開に対応した紛争解決制度全体の適応プロセスの一部であることが、研究の進展により明確になってききている。そうした本研究の成果を踏まえた上で、さらにスケールアップした研究を計画する必要性があるため、それに向けた準備作業にも鋭意取り組んで行くことを合わせて計画している。
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