研究課題/領域番号 |
16K03326
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岩本 禎之 (李禎之) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20405567)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際司法裁判所 / 当事者適格 / 訴えの利益 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際法における実体法と手続法の相互作用を裁判という局面から考察することを試みるものであり、国際司法裁判所に対して「①誰が(当事者適格)」「②何を(救済方法)」請求できるのかを判例分析を核として探求することをその目的とする。初年度である平成28年度は、当事者適格(上記①の問題)を検討対象とした。 まず、実体法規範の多辺性に関連する共同体利益や集団利益といった利益概念の展開について学説を参照しながら整理を行った後、手続的な訴訟要件に関わる利益概念を国際司法裁判所判例に即して整理し、実体法上の利益概念と訴訟法上の利益概念の相互関係について検討を行った。 判例分析からは、訴訟法上の利益概念が、直接的・個人的な利益のみならず、一般的・間接的な利益をも包含するものとして定式化されており、そこには実体法上の法状態・法関係の明確化が含まれ得るという点で広範かつ柔軟な概念として把握されていることを確認した。すなわち、訴訟法上の利益概念は、訴訟対象たる紛争主題に関わる実体法の規範構造に依存しているということができるのである。それ故、実体法上の利益概念の展開に対応する形で、訴訟法上の利益における「具体性」や「直接性」をはかる基準が緩和されていると理解することができるのであり、そのことが実体法規範上の利益保護を訴訟において主張し得る当事者の範囲(当事者適格)を拡張しているという関連構造にあることを実証的に明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する概念の整理および法的利益の把握について、判例を整理する作業を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目からは救済方法の展開を解明する作業に進み、平成29年度は違法行為の中止に焦点をあてる。 違法行為の中止は、行為命令の一類型を構成するものであり、不作為義務違反の場合には差止命令の形態をとり、作為義務違反の場合には義務付け命令の形態をとると考えられる。検討作業の対象として、①要件としての継続的違法行為の概念整理、②違法行為中止を求める行為命令の法的性格(一次義務との関係)、③違法行為中止命令の実際の帰結、といった点をポイントに定めて分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程調整の問題から予定していた出張を断念したこと及び購入を予定していた欧文書籍の刊行が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も資料収集とその分析(意見交換を含む)が主たる作業となることもあり、そのための関連書籍等の購入費用および出張旅費を中心に研究費を使用する予定である。
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