研究課題/領域番号 |
16K03330
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
北村 泰三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30153133)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際人権法 / 人権条約 / 正当性 / 履行監視 / ヨーロッパ人権条約 / EU法 |
研究実績の概要 |
本年度は、EUにおける刑事司法制度の進捗と人権保障との関係を取り上げてきた。というのは、EUでは21世紀を迎えて、刑事司法分野における進展が著しく、近年ではEU検察局の設置案が具体化されている。こうした展開の一方で、人権への取組については不十分であったため、刑事司法協力を強化することにより、被疑者、被告人の権利がないがしろにされる懸念も指摘される。しかし、EUにおいても刑事手続上の権利の保障なくして、EUの刑事司法分野における立憲的な正当性を確保することはできない。この問題に対してEUはどのように取り組んでいるかという観点から取組み、「EU刑事司法と立憲的人権保障の課題」(戸波江二先生古希記念論文集『憲法学の創造的展開・下巻』信山社、2017年12月、175-200頁)として取りまとめた。本論文では、EUの刑事司法と人権をめぐる問題状況を背景として、EUにおける刑事司法協力体制の発展において正当性を確保するために必須とされる立憲的な人権保障にむけてヨーロッパ人権裁判所とEU司法裁判所の対話の推進という形で取組み始めている点につき一定の意義を認めている。 その他には、わが国の刑事裁判において勾留中の被告人が法廷に出頭するにあたって手錠・腰縄で拘束される措置に関して、国際人権法の観点から研究を行った。このために、2017年9月下旬にはドイツのケルン、フランスのストラスブールおよび英国のロンドンを訪れ現地の裁判所で実地の調査を行った。ヨーロッパ人権裁判所も訪問して、判例法につき教示を受けてきた。この成果は、論文に取りまとめて公表する予定である。 メキシコにおける日本法紹介プロジェクトとして、Refugee law and practice in Japan: A Critical Viewというタイトルの論文を2017年1月に提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は未だ途上ではあるが、現段階では以下のような見通しをもっている。すなわち、本研究における「国際人権条約上の履行監視機関」とは、人権諸条約により設置された、各種の条約上の委員会及び地域的人権条約においてはヨーロッパ人権裁判所等の人権裁判所も含むものである。こうした人権条約上の履行監視機関の「正当性」とは、結局のところこれらの機関が、国家を越えるグローバル社会(または地域的国際社会)における人権保障の中枢として、いかなる役割を果たしうるかという問題であることと考えられる。 したがって、これらの履行監視機関の役割が適切に果たされるためには、それらの諸機関の地位や権限行使に関して正当性が認められる必要がある。そのためには、すくなくとも国家における立憲的な正当性と同程度のまたは同質の立憲的な要素を履行監視機関が具備していることは通常は困難であろう。したがって、現状では国家の存立基盤が危ぶまれていない限り、国家による人権保障に正当性が認められる。それは、ヨーロッパの人権保障体制の下での「補完性の原則」や「評価の余地理論」と相通じるものであろう。 そこで条約上の履行監視機関に正当性が求められるのは、国家の側における基本的人権保障システム、民主主義の基本的要素および法の支配等が適切に行われていないことにより、立憲的な正当性に問題があるかどうかを監視する点にあるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、以上のような包括的な視点からヨーロッパ人権裁判所および自由権規約委員会に関して一定の研究成果が得られている。今年度は、最終年度であるから、これまでの本研究課題に関する研究成果を取りまとめて、公表していく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国人研究者の招へいプログラムの実施を考えていたが、昨年度中には実現できなかった。今年度中の実現を予定している。
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