研究実績の概要 |
難民条約の解釈、適用における正統性を考察した論文(スペイン語訳)がメキシコ自治大学より出版された(La Ley de Refugiados y la practica en Japon: una vision Critica, Japon. In Arturo Oropeza Garcia ed., Una vision juridica y geopolitica en el siglo XXI,2019, pp. 373-404.) 英語論文In Search of Cultural Diversity in International Human Rights Law; Toward the Coordination of Fragmented Case-Lawを脱稿した(Japanese Yearbook of International Law Vol. 63に掲載予定)。本稿は、イスラム女性が着用するブルカの公の場における着用を禁止したフランス法をめぐってヨーロッパ人権裁判所が条約違反を否定したのに対して、国連の自由権規約委員会は、同趣旨案件に関する個人通報事件において人権規約違反を認定した問題を契機としている。同一問題について、地域的人権条約と世界的人権条約との間で解釈の矛盾、抵触が生じているのは、国際人権法の断片化現象の1つでもある。この問題では、文化の多様性の尊重を含む意見表現の自由、信教の自由などの基本的人権の尊重を求める主張と移民に対する同化・統合政策的な観点からの秩序の維持を優先させたい国家的な理由により人権の制約も可能かどうかをめぐる議論が背景にある。本稿では、文化多様性を基礎とする個人の人権の制約が可能かという問題を論じ、かつ人権条約実施機関の間での司法的対話による問題解決を探る必要性を指摘したものである。本論文は、本研究の総まとめ的意味がある。
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