本研究の目的は、「立憲的多元主義」を分析枠組として用いることにより、国際人権条約上の履行監視機関の正当性(legitimacy)の条件を明らかにすることである。そのため本研究では、人権条約システムの「正当性」(社会の成員間で強制によらずとも従うことが義務であり、正しいと認識されているルールの属性)は、各国の憲法秩序に見られる民主的な価値に内在するのではないかという仮説から出発した。特に、種々の価値観を包摂する国際社会における人権保障という視点からは、多様性の確保という立憲的多元主義から派生する価値の実現が人権条約上の履行監視機関の正当性を論ずる上で重視されるべきであると考えられる。
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