研究実績の概要 |
本研究の目的は、障害者権利条約の国内実施における国内人権機関の役割を解明することである。本年度は、(1)条約実施機関による締約国の国家報告に対する最終所見の研究を実施した。なお、(2)ドイツにおける国際比較現地調査・研究を年度末に予定していたが、新型コロナウイルスがヨーロッパで蔓延し始めたため、これを断念した。 (1)に関しては、2回にわたるオーストリアおよびハンガリーでの現地調査・研究で聴取した情報や収集資料を整理・分析し、次の知見を得た。①各国の国内人権機関の活動実績は、当該国の統治機構のありよう(三権分立の形式・実態や憲法最高裁判所の有無など),ならびに民主主義の定着度や政治の安定度等をも踏まえて、総合的に評価する必要がある。②したがって、障害者権利条約の国内実施における国内人権機関の役割を評価する際にも、①の観点は欠かせない。③国内人権機関の統治機構の中での位置づけと活動の安定性も重要ではあるが、障害者権利条約の国内実施における国内人権機関の役割に関しては、国内人権機関と市民社会との協働・連携の質と量がかなり大きな要素である。④より具体的には、政府から独立した国内人権機関、障害者施策に責任を持つ中央・地方政府の部門と障害者団体との日常的・継続的な協働関係の実態が活性化していれば、概ね当該国内における障害者権利条約の実施は実効的なものとなっている。
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