本年は、共同責任論に関わる国際実行を検討することを試みた。その一つとして、現在執筆中の論文「リビアに対する非軍事的措置」(未刊行)がある。本稿はリビアに対する非軍事的措置の法的評価(特に第三者対抗措置の実行とみなせるか)を検討するものだが、共同責任論に関わる論点も分析する。 リビアに対する措置で注目されるのが、アラブ連盟理事会(the Council of the League of Arab States)によるリビアの資格停止の措置(2011年2月22日)である。この措置は、アラブ連盟規約に抵触する可能性がある。とはいえ、停止決定はアラブ連盟の公的機関(理事会)によるものであり、手続き的には有効である。したがって、資格停止の措置は、個別加盟国ではなくアラブ連盟に帰属するように思われる。他方で、発議および決定したのはリビア以外の加盟国である点に鑑みれば、各加盟国に行為が帰属する可能性も捨てきれない。たとえ帰属しなくても、一定の責任を負う可能性を検討する必要がある(ILC国際組織責任条文59条など参照)。 以上の論点は、措置を対抗措置として正当化できるかを検討する際の重要な前提問題である。個別国家に帰属するならば、次にその措置は第三国対抗措置(Third-State countermeasures)として正当化できるかの論点に移行する。もしアラブ連盟という国際組織に帰属するならば、次に問題になるのは国際組織による措置も第三「者」対抗措置(Third-party countermeasures)として正当化できるかという論点となる。さらに、加盟国が派生的責任を負うならば、その正当化の可能性も検討対象となる。以上の理由により、本論文で共同責任論の論点を検討する次第である。
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