研究課題/領域番号 |
16K03338
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 伸至 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (80419332)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療の質の確保 / 医療制度 / 医療保険制度 / 医師の資格制度 / 医療の質マネジメント / 診療報酬 / 診断治療方法 / ドイツ |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、ドイツの医療保障法制における医療の質の確保に関する制度についての文献に加え、医療の質の確保に関する制度を具体化する共同連邦委員会による指針や保険者側と診療側との間の協定など、幅広い資料を収集し、読み込みと検討を行った。
これらの研究と平成28年度の実績を基礎として、「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデル ― 医療提供体制と公的疾病保険を中心に―」を執筆し、2018年2月、法政理論50巻3・4号に掲載するに至った(112頁ないし239頁)。同論文では、まず、医療の質の確保に関する制度を読み解くために不可欠なドイツの医療制度の概要、特に、保険診療の組織化と診療報酬などについて整理した。次に、法体系を認識するためのアプローチを選定する作業を行い、カテゴリーに手段を位置付けるアプローチを用いることを決定した。そして、このアプローチに従って、ドイツの医療の質に関する制度を「医師の職業法」、「社会法」に分け、さらに後者につき、「給付を対象とする制度」、「医師を対象とする制度」、「医療施設を対象とする制度」、「医療提供体制に関係する制度」、「医療施設情報提供制度」に整理し直すことを通じて、ドイツ法の構造を探求した。その結果を踏まえて、日本法研究の際に参照可能な法体系モデルの案出を行った。
さらに、2018年3月には、ドイツの関係機関、すなわちドイツ病院協会、AOK Nordost、ブランデンブルク州社会労働保健省、看護管理協会を訪問し、医療の質の確保制度の運用実態や現状などの事項について聴取した。文献には必ずしも明記されていない関係者の評価や政策形成過程との関係などの情報も得ることができ、有益であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデル ― 医療提供体制と公的疾病保険を中心に―」を執筆し、2018年2月、法政理論50巻3・4号に掲載した。これにより、日本法を検討する際に枠組みとして利用できる法体系モデルを獲得することができたことから、全体としては、概ね順調に進展していると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までの上掲の研究実績を踏まえ、日本法の検討を行う。日本法における医療の質の確保に関する制度は法律政省令のほか、告示や通達など様々な媒体に散在しているので、まずは、その取集整理を行い、上掲の「ドイツにおける医療の質の確保に関する制度の構造と法体系モデル ― 医療提供体制と公的疾病保険を中心に―」において案出した法体系モデルを枠組みとして利用しつつ、制度描写を行う。こうした作業を通じて、本研究主題に対する答を探索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月に行ったドイツにおける調査に係る旅費につき、その支払いが2018年4月になったことにより、平成30年度の実績報告分として整理されたため生じた「次年度使用額」であり、実質的には次年度使用額はほとんどないものと理解している。
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