最終年度(令和元年度)においては、ドイツでの看護師配置基準に関する改革の状況等を調査し、医療の質の確保との関係について検討した。その検討結果も取込み、研究成果として、「ドイツのDRG包括報酬システム」健保連海外医療保障123号(2019年)1頁ないし11頁を公表した。 また、前年度に引き続き、わが国の医療の質の確保に関する制度を整理し、個別の制度群を描写するとともに、制度群の構造を解明するなどの作業を行い、それらの成果を踏まえて、我が国の公的医療保険法制などにおける課題と対応策について検討した。その検討結果は、「医療の質の確保と医療保障法(1)」法政理論52巻2号(2019年)27頁~75頁、「同(2)」法政理論52巻3号(2019年)15頁~61頁、により公表した(「同(3・完)」も年内公表見込み)。 研究期間全体を通じた研究内容は、ドイツの制度を参照した比較法研究を通じて、わが国の医療の質の確保に関する制度群の相互連関などの構造を明らかにし、プロセス指標等や規制的手法の活用の可能性などについて検討するものである。その結果、ドイツでは公的医療保険法制において相応に体系化された制度群が整備されているとの知見が得られたほか、ドイツ法に基づき案出した医療の質の確保に関する法体系モデルに照らし、わが国の制度群を整理してみると、個別的な制度のメニューは揃っているものの、相互連関に乏しく体系的な制度整備が進んでいないこと、特に、病院機能評価等と臨床評価指標などとの間の連携がないこと、プロセス指標に関し重要な診療ガイドラインや医薬品適応外使用の公的医療保険における位置づけに不全感が残ることなどが明らかとなった。わが国における医療の質の確保に関する法の構造などの現況と課題、制度整備の方向性について示唆が得られた点で、学術的、社会的意義が認めされる。
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