研究課題/領域番号 |
16K03343
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲森 公嘉 京都大学, 法学研究科, 教授 (20346042)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国民皆保険 / 医療保障 / 生活保護 / 基礎的医療保障(CMU) / 医療給与 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、当初の研究計画に従い、まず、日本の公的医療保険制度と生活保護制度との関係についての検討に着手した。国民健康保険制度及び生活保護制度の創設・展開に関する立法資料や行政資料等の史料を収集し、特に両制度の関係のあり方の変遷とその背後にある考え方の変化を把握し、整理する作業を開始した。特に、当初は生活保護受給者にも国民健康保険制度の適用が認められていたのが、一律の適用除外へと至る過程を中心に検討を進めている。 また、判例データベース等を利用して、公的医療保険における低所得者への保険料減免に関する裁判例や、生活保護における医療扶助に関する裁判例の収集を行った。さらに、各自治体における保険料減免基準の実情についても、調査を始めている。 低所得者に対する保険料の減免制度や、保険料滞納者に対する被保険者証の返還ならびに被保険者資格証明書の交付、及び、現物給付である療養の給付から償還払いである特別療養費の支払いへの転換は、国民健康保険だけでなく、後期高齢者医療制度でも行われているので、後期高齢者医療制度も含めて、その実態に関する情報収集を進めている。 諸外国における低所得者の医療保障のあり方については、フランスの基礎的医療保障制度(CMU)に関する日本語及びフランス語の文献の収集・調査を行った。また、韓国の医療保険制度及び公費負担医療である医療給与制度に関しても、日本語文献の収集・調査を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は計画初年度ということで、関連文献の収集・調査等を通じて、分析の前提となる法制度の内容及び運用実態に関する情報収集を行うことを予定していたところであるが、文献収集に関してはおおむね順調に進んでいる。ただ、関係者等へのヒアリングは行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき、平成29年度は、初年度に引き続き関連文献の収集・調査に努め、各検討項目に関する基本的な状況把握の作業を継続するとともに、その分析・検討の作業を開始することとする。 また、今年度は関係者等からのヒアリングや意見交換を行う機会を持ちたい。具体的には、5月末に韓国法制研究院の研究員が他の研究者とともに京都に訪れることになっているので、その際に、韓国の公的医療保険制度及び医療給与制度、低所得者の医療保障の実態に関するヒアリングと意見交換を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、当初予定していた訪問調査を実施できなかったことから、旅費の支出が当初予定よりも下回り、次年度使用額を生じることとなったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成29年度における文献等の購入費用に充当する予定である。
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