最終年度である平成30年度は、これまでに収集した情報に基づき、各検討課題についての議論の整理と分析を中心に研究を進めた。 日本法に関しては、国民健康保険の一部負担金の減免に関する裁判例(札幌高等裁判所平成30年8月22日判決)や、低所得者への介護保険料賦課決定処分に関する裁判例(広島地方裁判所平成30年9月11日判決)など、平成30年度中に出された公的医療保険法や介護保険法、生活保護法等に関する裁判例について、新たに分析・検討を行った。 また、平成30年6月1日に成立した生活困窮者自立支援法等改正法による生活保護法等の改正に関して、実際の保護実施上の運用基準の見直し等について、その後の動向等のフォローを行った。 フランス法に関しては、2016年社会保障財政法(LFSS)により、従来の普遍的疾病保障(CMU)に代えて導入された普遍的疾病保護(PUMa)についての情報を収集し、CMUに関する情報とあわせて、その整理及び分析を行った。 また、平成31年3月には、現代フランス社会保障法学の泰斗である2名のフランス人研究者を迎えて、神戸大学大学院法学研究科にて開催されたフランスの社会保障制度・医療保障制度に関する講演会・研究会に参加し、講演者・出席者らとの意見交換を通じて、フランスにおける「連帯」概念の意義について改めて確認するとともに、フランスの国家医療扶助(aide medicale d'Etat)制度(主に、CMUの対象とならない、不法滞在外国人への適用が問題となる)について、最新の知見を得ることができた。
|