従来の社会保障制度において、子どもへの支援は親の状況と連動して支給を決定する仕組みをとることが多く、親の扶養責任と強く関連する給付や支給要件、子どもへの援助を世帯(主)への給付に包含するような給付、親の選択が重視される給付手続き等が定められてきた。しかし、社会保障給付を受けられない不利な状況が親を通して子にも課せる結果、経済的格差の拡大につながっていることが多くある。この中には、貧困ラインの境界で生活し、将来的に成人し独立すると就労的自立や社会的自立が困難になるリスクを有する者も多くいる。 このような子どもをめぐる社会保障制度の課題について、研究代表者は、子どもに給付が届く給付の形式という観点で検討を行った。そして、①社会保障の給付の多くは、子どものニーズを「世帯」の中に包括的に吸収させており、生活保護法を除けば、子どもの貧困防止法制定以降も同法による基準を取り込む措置が不十分である、②世帯主としてあるいは受給権者として給付を受ける親への条件設定について、子どもへの給付との「一部切り離し」や「緩和」が見られるものの、極めて限られた制度に限られている、③我が国の社会保険は保険原理の維持に比重が置かれているが、子どもに着目した扶助原理の拡大が必要であり、イギリスを参考にするとその方法として、育児休業給付等の特定の給付の支給要件について「親の継続的就労要件」を緩和・削除すること、④(非雇用型の働き方への対応という側面を含め)社会保険を補完する社会手当の役割を再検討ことを指摘した。また、研究分担者は、子どもの主体的利益・権利保障という観点で、福祉サービスのの受給過程を確認し、子どもの主体的利益と保護との調和を目指した「間接的主体性保障」という概念を提示した。
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