研究課題/領域番号 |
16K03351
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
中川 純 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50326534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障害者 / 雇用 / 就労移行支援 / 障害年金 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、障害者の就労可能性を積極的に評価し、一般就労への移行に取り組んでいるアメリカ・オハイオ州と障害者の就労移行支援の体制が十分に整備されていないタイ・パタヤ市およびバンコク市を訪問し、調査をおこなった。 アイオワ州の州政府部局の調査では以下のことがあきらかになった。アイオワ州は、連邦政府の障害者雇用イニシアティブを実践した5つの州のうちの1つであった。これに基づき、2012年から授産施設などの施設型から地域型への移行を実践した。2015年にアイオワ就労支援法(Workforce Innovation and Opportunity Act)が成立し、地域型就労をさらに促進することとなった。旧制度の主な変更点として、従来は医療的判断に基づいた受給権のある個人のみを対象としていたが、潜在的な受給権を有する個人に適用を拡大した。また、24歳以下の個人については州の査定を受けた後でないと施設型(授産施設)にいくことができなくなり、仮にいったとしても6か月、1年など定期的に再査定されることとなった。さらに、障害者施策が多くの部局が担当しているのに対し、共通の目標に基づく計画(unified state plan)により方向性を一定の方向に定めることとした。 タイの調査では以下のことがあきらかになった。パタヤ市には若年障害者のための全寮制の職業訓練学校があり、職業教育、能力開発、就職支援などが積極的に行われている。そこでは極めて高い就職率を実現していた。しかし、タイの障害者の多くは都市部ではなく、地方に住んでおり、職業訓練を受けられるような状況ではなかった(ただし、家族、コミュニティのサポートがあるため、衣・食・住には困っているわけではない)。また、バンコク市のような都市部では高い生産性を求められる結果、就労が困難であるという状況が発生していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、アメリカに2度調査にいくことにしていた。アメリカのワシントンDCの政府機関およびバージニア州の機関を訪問し、「雇用第1主義(Employmet 1st)」の政策の全体像を調査するはずであったが、先方の都合でその機会に恵まれなかった。進捗状況がやや遅れている理由は、この調査が実現できず、平成29年度に持ち越すことになったことを理由としている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、アメリカのワシントンDCを中心として政府機関を訪問し、「雇用第1主義」の政策の全体像について調査を行う予定である。それに加えて、アメリカで障害者の一般就労移行に対し先進的な取り組みをおこなっている地区(シアトル市を含むワシントン州キング郡およびオレゴン州ポートランド市)を訪問し、その実践内容を調査する予定である。 これに加えて、アメリカの「雇用第1主義」の歴史的展開についても文献研究を行う予定である。 また、タイの障害者雇用施策の全体像および一般就労移行を抑制している要因の研究にも取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に繰越金が発生した理由は、第1に予定していたアメリカ調査が翌年度に持ち越されたこと、第2に携帯調査用のパソコンの購入の発注が遅れてしまったことにある。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において、28年度に予定していたアメリカ調査を9月に行う予定にしている。また、携帯用パソコンについては平成29年度に発注し、ただちに調査にために使用する予定である。
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