研究課題/領域番号 |
16K03352
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
橋本 陽子 学習院大学, 法学部, 教授 (00292805)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 労働者概念 / 労働契約 / フランチャイズ契約 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、労働者概念について従来の研究を進め、コンビニオーナーの労組法上の労働者性を肯定した労働委員会の2つの命令について検討を行い、労働契約とフランチャイズ契約の関係について考察し、論文を公表した。コンビニオーナーは、本部とフランチャイズ契約を締結していること、そして少なくないアルバイトを雇用している点で、従来労働者性が争われた就労者とは大きく異なる。フランチャイズ契約は、独禁法の規制を受け、公取委のフランチャイズ契約に関するガイドラインによって、フランチャイジーに対する一定の保護も図られており、労働法と経済法の関係も問題となる。ヨーロッパでは、労働法と経済法が交錯することはなく、労働協約はカルテル禁止の例外であるが、自営業者の契約条件を集団的に定めることは禁止される。法体系としては、ヨーロッパのように整理することが理論的に明快であり、当初、営業の自由に違反するとして弾圧された労働組合運動が、やがて団結権が憲法上の権利として確立し、労働協約がカルテル禁止の例外として確立したこと歴史的発展にも合致するが、日本では、産別の労働協約が成立しなかったという労使関係の実情に基づき、フランチャイジーが労組法の適用を受け、経済法の規制にも服することはありうるという議論を展開した。 また、多重請負関係における労働者性が争われた珍しい判決(わいわいサービス事件大阪地判平成28・5・27判例集未掲載)が出たので、契約関係にある雇用主との間の使用従属性のみを検討した判決を批判し、就労先である元請企業との間における就労の実態も使用従属性判断において考慮すべきことを論じた。 その他、EU法上の労働者概念について検討を行い、一橋EU法研究会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、「事業」ないし「事業所(場)」の概念についても、本格的に検討を進める予定であったが、ほとんど取り組むことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続き、労働者概念の検討を進めるが、「労働者」と並んで、労働法の適用において重要な概念である、「事業」ないし「事業所(場)」の概念についても、検討を進めていきたい。 また、平成28年度に研究会で報告したEU法上の労働者概念について、公表に向けて、さらに練り直したい。 さらに、2016年のドイツ民法典改正によって労働契約の定義規定が民法典611a条に挿入されたが、この規定の意義について、検討を行うとともに、ドイツの社会保険の強制被保険者である「就業者」の概念に関するドイツ社会裁判所の判例においても新しい傾向がみられるので、検討を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍代および旅費が予想よりも使用額が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年5月にシンポジウム参加のために渡独の予定があり、旅費を使用するほか、書籍の購入も控えていたので、購入すべき書籍を購入していけば、順調に使用できる見込みである。
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