研究課題/領域番号 |
16K03353
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
原田 啓一郎 駒澤大学, 法学部, 教授 (40348892)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地域包括ケア / 高齢者 / 住まい / 地域居住 / 福祉政策 / 住宅政策 |
研究実績の概要 |
これからの高齢者の住まいには、継続的なサービスの質の確保・向上や高齢入居者の保護等、高齢者の住まいの社会性を確保するための体制整備が一般の賃貸住宅以上に求められる。本年度は、こうした体制整備の法的諸条件を検討するために、1)高齢者の住まいに対する登録・監督・外部評価等の法的規制の枠組みに関する考察、2)居住費負担の社会化に関する基礎的考察を行った。 1)については、わが国の高齢者の住まいに関する事業主体の参入規制や事後規制、契約内容に関する規制等の行政による監督のほか、第三者による評価・認証体制について法的な分析と検討を行った。第三者による評価・認証体制については、福祉サービス第三者評価とは別に、独自の評価・認証基準による継続的な評価・認証の仕組みを構築した公益財団法人の活動について調査を行い、外部評価の制度的限界と継続的な質保証に向けた認証制度の必要性を明らかにした。また、高齢者を含む生活困窮者に宿泊場所と生活支援サービス等を提供する施設の実態把握と関連裁判例の分析を行い、民間市場における高齢の生活困窮者の住まいの供給に関する法的課題を把握し、分析を行った。 2)については、今年度は比較法的視点の獲得を主たる目的として、フランスで基礎資料の収集及び予備的調査を行った。この調査では、フランスの住宅政策の展開や、住宅手当に関する社会保障法制と住宅法制の基本的な構造を整理することができた。また、変化する医療・介護ニーズや高齢社会に対応するために2015年に制定された高齢社会の対応に関する法律の制定背景とその後の動向を把握した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標は、高齢者の「住まい」と「ケア」の実施体制とその内容規制の法的分析のうち、「住まい」を中心に、供給体制及び内容規制の法制度の整理とその法的課題の分析を行うことにあった。本年度は、聞き取り調査による一定の実情把握とともに、フランスでの資料収集・現地調査を行うことができた。また、基礎文献や関連裁判例の検討により、継続的なサービスの質の確保・向上や高齢入居者の保護に関する法的課題を把握することができた。本年度の検討成果の一部について、2018年度に論文等の公刊が予定されていることをあわせ考えると、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は、高齢者の「住まい」と「ケア」の実施体制とその内容規制の法的分析のうち、「ケア」について、サービス付き高齢者向け住宅等で提供されている生活支援サービスを中心に住まいとのかかわりで検討を行う。そして、3年間の総括的検討として、高齢者の地域居住の実現に向けた地域包括ケアシステムの構築のための法的条件整備の検討を行う。
|