本研究では、高齢者の住まいが多様化するなかで、住み慣れた地域で、自分らしい生活を可能な限り実現できるようにするために、その生活のベースとなる「住まい」と生活を支える「ケア」の保障のあり方を法的に検討している。最終年度である平成30年度は、まず、昨年度に引き続きフランスで高齢者の住まいに関する法制度の資料収集・調査を行い、1)要介護者の施設(EHPAD)と自宅との中間に位置付けられる、自立度の高い高齢者向けの住宅と、2)要介護者の施設について、居住者の心身の変化に対応した住まいのあり方と、そこで提供されるケアのあり方に着目しながら法制度の考察を深めた。具体的には、1)について、自立度の高い高齢者向けの住宅である、自律住宅とサービス住宅に着目し、その地位や機能の異同、提供される生活支援サービス等の内容、ケアの提供をめぐる法律関係等を検討した。2)については、社会福祉・家族法典を根拠法とする福祉系の施設を中心に、施設における居住やケアに関する契約内容、施設におけるケアの質の担保をめぐる仕組み等を検討した。 次いで、3年間の研究実績をもとに、本研究課題に関する研究成果の取りまとめ作業を行った。取りまとめ作業では、自宅と施設という従来の2分法的な区分にとらわれず、高齢者が居住する場所を高齢者の住まいとして位置付け、その多様な住まいを高齢者の状態に応じて整理を行うとともに、高齢者の住まいとケアの保障という観点から、常に変化し続ける高齢者の虚弱化のニーズに対応できる地域包括ケアシステムの構築のための基本的視座の獲得に向けた考察を行った。 本研究との関連で、「社会保障法フォーラム2018・社会保障を支える法と政策の再検討」において「地域包括ケアの法的評価」について個別報告を行った。
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