前年度までの研究を補充しつつ、わが国における確約手続制度の在り方についても検討を加えた。 研究実施計画(以下、計画とする)の第1点目に関して、新しいEU司法裁判所判決による争訟可能性の範囲の変更可能性があること、違反行為類型毎の制度利用の傾向の定着、類型毎の制度利用が生じてきた理由が制度の実効性・効率性や確約内容の実効性に由来すること、などが認識できた。制度の実効性・効率性を確保するために柔軟な法運用がはかられていることが確認できた。 計画の第2点目に関して、研究開始時には、確約制度が日本において施行前であったところ、現時点では施行されており、それに伴い規則及び対応方針が公表されていることに違いがある。他方、これによった事例は未だ展開されていない。ただし、先取り的に確約決定同様な対応が行われたという事案が数件発生している。法律、規則、及び対応方針に基づくのみでも指摘可能な課題であり、今後解釈・運用などさらには追加的制度設計により考えるべき点として以下の点がある。第一に、適切な事件選択基準の明確化(実効性・効率性)、第二に、公取委の通知が手続き開始の契機となるので、その際に公取委の責任として提示されるべき事実や証拠の内容や法的認定の水準(公正性・公平性)、第三に、制度運用や確約内容実現のための実効性・効率性担保の仕組み。公正性・公平性の観点から検討すべき点である争訟可能性や損害賠償などへの影響について、現時点でどのようになるのかは不明である。争訟可能性についてはEU競争法同様の対応になることが考えられることなども含めて検討課題である。
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