本研究は、保護処分の法的性格という問題を、①保護処分の執行内容、及び、②保護処分の成人への適用、という問題との関係で再検討するとともに、それを通じて、①の問題については、少年院での処遇、保護観察それぞれについて、その執行段階における処遇の目的と限界を明らかにし、また、②の問題については、保護処分を若年の成人にも課すことの当否と、その具体的な方法を検討することを目的とするものである。 最終年度にあたる平成30年度は、2年間のドイツを中心とした比較法研究および歴史研究を踏まえて、上記の2つの問題につき、とりまとめを行った。その結果は、順次、雑誌論文として公表する予定である。また、この間、平成29年3月から開催されている、法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会における審議(平成30年度は、8回の会議が開催された)に委員として継続的に参加した。部会における検討項目の一つは、少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合に、18歳、19歳の者を含む若年成人に対する新たな処分の創設の当否である。それと同時に、部会においては、民法の成年年齢が引き下げられた場合にも、少年法の適用対象年齢を維持し、民法上の成年である者を保護処分に付すことの当否についても議論が続けられており、これは、本研究の②に対応するものである。そこで、部会では、この点につき、本研究における検討の結果も踏まえて、民法の成年年齢と少年法の成人年齢を切り離すことが不可能というわけではないものの、両者は、保護原理に基づく自由の制約という点で共通していることから、それを一致させるのが法制度としての整合性という観点からは望ましいという意見を述べた。
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