研究課題/領域番号 |
16K03372
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
笹倉 宏紀 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00313057)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 弁護士・依頼者間秘匿特権 / 証拠能力 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,いわゆる「弁護士・依頼者秘匿特権」について,比較法的分析を基に,これを我が国の民事・刑事・行政手続に導入する可能性と,導入する場合の具体的な保護のあり方について包括的な検討を加え,具体的な提言をすることを目的とする。 平成29年度は研究計画の2年目に当たるが,前年度に引き続き関連文献・情報を収集するとともに,他の法領域に比して秘匿特権についての問題意識が鋭敏であり政治課題になりつつある独禁法における議論の展開をフォローすることに意を用いた。また,事実解明機能との兼ね合いが秘匿特権反対論の最大の論拠であるところ,前年度に引き続き,実務家と研究者の協働による複数の研究会に参加し,裁判における事実認定の具体的手法について具体的な知見を得ることに努めた。 平成29年度中に形を成した成果は次のとおりである。(1)秘匿特権を論ずる前提のひとつである刑事手続上の弁護人の援助を受ける権利について,学説・判例を網羅的に整理し検討する機会を得た(図書2件目)。(2)本研究課題の遂行に際しては,事実解明の利益の内実,およびそれに対抗する利益の双方を具体的に抽出し明確にした上でそれらを厳密に衡量し,具体的な規律に反映させる作業が必要であるところ,(秘匿特権を正面から扱ったものではないが)そのことを実践する作品を計4編公表した(図書1件目,雑誌論文計3件)。(3)民事・刑事・行政の各手続を通じて,前記の対抗利益の内実,すなわち,公権力による事実の解明が何を目的とし,それに対して人々が何を期待しているのかを明らかにすることが,秘匿特権の採否の検討において不可欠である。その点の考究も進め,成果を発表した(図書3件目)。 なお,本年度に予定していた海外調査は,独禁法における議論の帰趨を見極めた上で行う方がよいと考え,実施を見合わせた。議論の推移を勘案しつつ,平成30年度中の実施を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要欄に記載したとおり,海外調査の実施を見合わせたため。
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今後の研究の推進方策 |
過去2か年度の調査の結果を踏まえて,引き続き文献・情報の収集を行うとともに,具体的な提言に向けた検討を開始する。併せて,比較法の対象国における現地調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査を見合わせたことにより,旅費および調査先における文献収集等に充てるべき費用の支出がなかったため。未使用額は,今年度に延期した海外調査の費用に充てる。
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