研究課題/領域番号 |
16K03374
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
柑本 美和 東海大学, 法学部, 教授 (30365689)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 死因究明 / チャイルド・デス・レビュ― |
研究実績の概要 |
今年度は、児童虐待防止制度の一環としてのCDRについて、比較法的視点から検討を行った。我が国では、2017年の第193回国会で成立した改正児童福祉法の衆議院の附帯決議において、「六 虐待死の防止に資するよう、あらゆる子どもの死亡事例について死因を究明するチャイルド・デス・レビュー制度の導入を検討すること。」が採択され、現在、その仕組み作りが行われている。 この問題に対して世界に先駆けて対策を講じたのはアメリカ合衆国であるが、死亡児童の検証を多機関・多職種で行うChild Death Review(チャイルド・デス・レビュ―、以下、CDRという。あるいは、Child Maltreatment fatality reviewと呼ばれることもある)を州レベル、あるいはcountyレベルに設置し、子どもの死因を詳細に検討するようになった。CDRは、児童虐待死に対するアメリカの初期の組織的対応策の1つであり、虐待死見逃し防止のための制度でもある。アメリカ類似のCDRは、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどでも行われている。 これらの国々と日本との決定的な違いは、これらの国々には、コロナ―制度、ME制度という死因究明制度が存在し、我が国に比べ、より正確な死因究明が可能であるという点である。CDRは、そのような専門的死因究明制度の存在にもかかわらず、そこからこぼれ落ちるケースの存在が問題視されたたために創設されたのである。その点を踏まえ、我が国のチャイルド・デス・レビュー制度構築にあたっては、死因究明制度の根本的な見直しも必要となると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
虐待死か否かを見極めるためのチャイルド・デス・レビュ―システムに関し、今年度はアメリカとイギリスのシステムの文献調査を行い、それに基づく学会報告も行った。
|
今後の研究の推進方策 |
アメリカのチャイルド・デス・レビューについては、我が国でも多くの研究者・実務家が調査を行っており、広く紹介されている。しかし、イギリスの制度については、虐待死の究明を目的として構築されている部分があるにもかかわらず、それほど知られていない。イギリス(とりわけイングランド)のレビュー制度は、昨年から行われている児童保護制度の改革に伴い、変更が予定されている。今年度は、変更後の制度の実際を知るべく、実地調査を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
イギリスにおけるチャイルド・デス・レビュー制度についての調査を、研究協力者と共に行う予定だったが、調整に遅れが出たため、また制度改革の途中であり全体像が把握できない可能性があったため実施がかなわなかった。現在、視察の調整を進めているところであり、新たな制度の全体像、運用について、今年度は調査可能と考えている。
|