途切れのない児童保護の実現にとって、以下のような対応が求められると考える。 まず、虐待・虐待死発見制度の改善については、厚生労働省は、自身が主管する法律である「死体解剖保存法」を見直し整備し、これまで地方自治体に任せていた監察医制度を、国主導のものとして再生すべきである。 次に、刑事司法制度への児童虐待に特化した加害者の行動変容プログラム導入は一つの有効な方策であり、現在のように、既存のプログラムの一部を、虐待やDVに関するコマに変更して実施するものではなく、それ自体、虐待防止に焦点を当てたものとすべきである。 なお、最近、特に指摘されるようになってきているのが、保護者のメンタルヘルスの問題である。我が国でも、保護者が精神疾患を抱えている場合の支援の困難さが数多く指摘されている。メンタルヘルスの問題を抱えた虐待者は、通常、措置入院の要件には該当せず、家族等の同意が得られず医療保護入院もできずというように、入院制度の狭間に追いやられている。さらに、通院・服薬の必要がある程度に留まっていても、本人に病識がない場合には、家族の積極的な介入がなければ精神科医療へアクセスすることすらできない。このような保護者に対して、児童相談所は全く無力である。現在、精神保健福祉法における医療保護入院制度、措置入院制度等非自発的入院制度の改革が議論されているが、このようなメンタルヘルスの問題を抱えた虐待を行う保護者の精神科医療へのアクセスのあり方についても検討する必要があると思われる。
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