研究課題/領域番号 |
16K03376
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田口 守一 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80097592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 当事者主義 / 職権主義 / 司法取引 / 合意制度 |
研究実績の概要 |
(1) 本研究課題にとって、司法取引・刑事免責制度は大きな意味を持つところ、平成27年3月15日に国会に提出された合意制度を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」案は、平成28年5月24日に可決成立し、同年6月3日に公布されるに至った(平成28年法律第54号)。 (2) そこで、平成27年度科学研究費による調査研究として実施したドイツにおける合意制度の運用実態に関するインタビュー調査の結果について、平成28年度では、その内容を論文化することとし、①ドイツ合意制度の合憲性を基礎付けた2013年3月19日のドイツ連邦憲法裁判所の判決を基礎資料とした質問票により、②アウクスブルグ地方裁判所判事、フライブルグ地方検察庁検事およびミュンヘンの弁護士に対するインタビュー調査の結果から、③ドイツ刑事訴訟における合意制度の運用実態と、④とくに協議記録の実例を紹介した(田口守一「ドイツにおける合意手続の運用」信州大学経法論集1号(2017年3月30日)251頁~295頁)。 (3) 日本法に導入された「捜査公判協力型協議・合意制度」の解釈につき、ドイツ法の合意制度の運用実態に関する調査結果を参考として、①日本法においても、協議・合意手続の「透明性(Transparenz)」の要請が重要であること、②日本法は、合意に被疑者・被告人の自白を要求しない合意制度であるが、合意の公正さのためには、運用上、被疑者・被告人の自白が前提とされるべきであり、③したがって、「自己負罪型の協議・合意制度」の立法も検討されるべきこと等の問題点を指摘した。 (4) また、日本の判例法における実務の傾向を把握しておく必要がから、わが国の刑事訴訟法判例の網羅的解説を試みた(田口守一『最新重要判例250 刑事訴訟法』(弘文堂・2016年7月15日)総頁279頁)。今後の日本法の在り方を考察するための基礎となる作業となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
刑事訴訟法改正案が、予想以上に順調に国会で成立して公布され、その一部が施行されることとなったために、研究成果をより早期に論文化して公表する必要が生じた。そのため、当初計画していた外国法の調査研究を待たないで、これまでの研究成果を基礎として、日本法の解釈問題と取り組むこととなった。その点で、研究計画の内容をある程度修正する必要が生じたが、改正法の解釈・運用の問題点を可能な限り早期に論文化することも重要であるから、合理的な修正であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題である当事者主義と追行的職権主義の統合問題にとって合意制度はきわめて重要なテーマであるが、その合意制度が法律として成立公布され、その施行期日が平成30年と予定されている。したがって、可能な限り平成30年までに、日本法の解釈運用問題についての指針を提言したいと考えている。そのため、当初予定していた外国法の調査よりも、日本の判例・実務を中心とした当事者主義と追行的職権主義の統合問題の研究を優先的に進めていきたいと考えている。具体的には、この問題に関係する判例の研究およびとくに戦後初期における学説の研究に取り組むこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
刑事訴訟法改正案が国会で成立し公布されるに至ったため、外国法調査を取りやめて国内法の調査研究を優先させたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内法の調査研究のための資料収集費およびあわせて外国法については文献研究を中心としたいと考えているので、その資料収集費として使用する計画であるが、機会があれば外国法研究も実現したいと考えている。
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