研究課題/領域番号 |
16K03376
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田口 守一 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80097592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 当事者主義 / 職権主義 / 合意手続 / 刑事免責制度 / 司法取引 |
研究実績の概要 |
(1)刑事訴訟法の一部を改正する法律によって導入された合意手続および刑事免責制度(平成29年6月1日より施行)を広く概説するとともに、理論的位置づけおよび問題点を明らかにするために、田口守一『刑事訴訟法〔第7版〕』(弘文堂・2017年4月15日)においてこれらの課題に取り組んだ。 (2)合意手続および刑事免責制度の対象である会社犯罪に対する制裁制度のあり方が国際的に大きな問題となっており、2019年の国際刑法学会のテーマとなっている(2019年11月ローマで開催予定)。その準備会が2018年6月にドイツ・フライブルグで開催されることになり、日本側参加者の報告書 として、Morikazu Taguchi, New Developments in Investigation Proceedings and Sanction Systems for Corporate Crime in Japanを執筆した(2018年1月提出)。国際的関心は刑事制裁という狭い議論ではなく行政制裁も含む制裁制度の全体にあるので、伝統的な刑事制裁制度だけではなく、今後施行される合意制度・刑事免責制度による会社犯罪への対応および課徴金制度を中心とする行政制裁制度なども取り上げた。 (3)当事者処分権主義といっても、一方において実体的真実主義の原理および被疑者・被告人の権利保障の要請も妥当することから、裁判所の職権主義による当事者主義の補佐的な機能にも光を当てる必要がある。そこで、判例を素材としつつ裁判所の求釈明について短く論じた(田口守一「公判前整理手続における裁判所の求釈明義務」刑事法ジャーナル53号〈2017年8月〉3頁)。この問題は今後論文として取り上げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、刑事訴訟の基礎理論にかかわる問題であることから、研究のスタート時点では歴史的研究および比較法的研究を柱として研究計画を立てた。しかし、刑事訴訟法改正が予想以上に早く実現しかつより抜本的な改正がなされたことから、本研究計画を修正して、改正刑事訴訟法の解釈を優先し、また、合意手続および刑事免責制度の主要な対象犯罪である会社犯罪について国際的な関心が高まっていることから、その各論的研究を優先させた。この研究計画の修正は合理的であり、また、本研究課題への取り組みをより深化させるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成30年6月には、会社犯罪に対する予防、捜査および制裁に関する国際刑法学会の準備会がドイツで開催され、その会議において私が執筆した日本法の現状に関して報告する予定である。本研究課題は、刑事訴訟における当事者主義と職権主義の統合であるが、会社犯罪に対する制裁論の場面では、当事者と国家機関との協働(cooperation)が大きな課題となる。それは、本研究課題をより深化させる課題であるから、今後の研究の発展への糸口としたい。 (2) 本研究課題の最終目標は『刑事訴訟の構造』について研究結果を論文集としてまとめることになるから、その目標を実現すべく研究結果の論文化に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年6月にドイツで開催される会社犯罪に対する予防、捜査および制裁に関する国際刑法学会の準備会に出席して報告し、またドイツにおける合意制度に関する調査を実施するために、今年度予算を次年度に持ち越すこととした。
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