研究課題/領域番号 |
16K03377
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
池田 秀彦 創価大学, 法学部, 教授 (60168135)
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研究分担者 |
佐瀬 恵子 創価大学, 法務研究科, 准教授 (30609269)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 王冠証人 |
研究実績の概要 |
ウィーン大学でオーストリアの王冠証人規定に関する資料を収集し、研究を行った。王冠証人制度は、被疑者が捜査協力をする場合に報償として刑の減免や不起訴処分を行うものであり、制度として刑法上の対応をするものと刑訴法上の対応をするものとがある。オーストリアは、この両制度を有し、被疑者の捜査協力に刑の減軽を以て報いる規定(刑法41条a)と被疑者にダイバージョン措置を課しその履行をまって手続を打ち切る規定(刑訴法209条a)を有している。これまでの研究で、刑法41条aと刑訴法209条aの立法理由、規定の概要等について明らかにした。 刑法41条aは、組織犯罪に対する被疑者の一定の捜査協力の見返りに刑の減軽を認めるものであり、王冠証人になりうる者も組織犯罪を犯した者に限定された。その後、組織犯罪に限らず、重大犯罪、経済犯罪、贈収賄罪及びテロ犯罪の解明等を促進するために、刑訴法209条aが施行された。同規定で王冠証人になりうる者は、被害者を死亡させた罪を犯した者と性的自己決定権に関する罪を犯した者以外の者であり、被疑者が自己の犯罪の供述を通して他人の重大な犯罪の解明に決定的な寄与をした場合または犯罪組織において指導的な地位にある者の居場所の特定に決定的な寄与をした場合に、被疑者が課された金員の支払い、社会奉仕活動或いは試験観察という賦課事項を履行したときに手続を打ち切るという制度である。王冠証人の制度とダイバージョンとを結びつけたユニークな制度である。 ところで、刑法41条aがあるにもかかわらず、何故に王冠証人規定の刑訴法209条aを導入したのかについては、刑法41条aの実務上の成果が極わずかであり、死法と評される事態に至ったことが理由であった。 ベルリン自由大学で、ドイツの王冠証人立法に関する資料を収集し、分析を加えた。 我が国の自首に関して研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オーストリアの王冠証人規定である、刑法41条a及び刑訴法209条aについて、それぞれの立法過程、立法目的、規定の概要について明らかに、3本の論文を執筆することができた。 ドイツの王冠証人規定である刑法46条bに関する資料をある程度収集することができた。、
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の夏期休暇を利用して、チューリッヒ大学でスイスの王冠証人規定である、刑法260条の3の立法過程、立法理由、内容について資料を収集し、研究を行う。 2017年度に、ボン大学及びマックスプランク国際刑法研究所でドイツの王冠証人規定である刑法46条bの運用に関する資料を中心に、文献を収集する。 2018年度に、オーストリアの王冠証人規定のうち、2017年1月1日施行の改正法により大幅に改正された刑訴法209条aについて、その改正理由、新規定の内容について資料を収集し、研究を行う。 「被疑者の捜査協力に関する報償制度」に関する我が国の制度について、継続して検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が学内業務の関係で、2016年度に海外での資料収集を行えなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者は、2017年度に海外での資料収集を行う。
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