最終年度(18年度)において、まず、スイスの王冠証人立法に関して研究成果を公表した。「スイスの王冠証人立法研究序説」(創価法学48巻2号109頁、2018年11月)において、スイスの刑法上の王冠証人規定である刑法260条の3について、その立法の経緯をつぶさに紹介、検討したほか、その概要について明らかにした。又、創設にまでは至らなかったものの、2007年に成立したスイス刑事訴訟法制定の過程において刑事訴訟法に王冠証人制度を導入することの是非が検討されたため、これについて、詳細に検討した。刑事訴訟法制定のため、1994年5月に設置された専門家委員会での議論、同委員会が1997年に公表した報告書「29を1に」の中で示された王冠証人規定の導入を否とする結論およびそこに至る理由、およびこの報告書に関するヒアリングの対象となった州警察長官会議、スイス刑事訴追機関会議、スイス民主法律家協会、スイス刑事法律家連盟、ベルン大学、バーゼル大学等の意見をできるだけ詳しく紹介した。さらに、このヒアリングを受けて、司法警察省が2001年6月に取りまとめた、スイス刑事訴訟法草案の付属報告書の中で言及された王冠証人制度に対する否定的評価について紹介した。さらに、文献における王冠証人制度に対する見解を紹介し、検討した。 次いで、ドイツの王冠証人制度の史的展開に関する研究成果を公表した。「ドイツにおける被疑者の捜査協力に対する恩典制度の史的展開(1)」(通教論集(創価大学)21号、121頁、2018年8月)において、1970年代の立法、すなわち、テロ対策、麻薬犯罪対策のための草案中の王冠証人規定、および当時の議論状況について詳細に紹介し、検討した。
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