令和元年度は、これまで続けてきた国立重度知的障害者総合支援施設のぞみの園の研究検討委員として、全国の地域生活定着促進センターで矯正施設を退所した知的障害者等に対してアンケート・ヒアリング調査を行った。この研究検討を通じて、知的障害女性の更生保護における支援の困難さという新たな課題が浮上した。そこで矯正施設を退所した知的障害等女性を対象とした地域生活支援の実態調査研究事業に参画し、またのぞみの園主催の実践者向け研修会(2月)分科会でコーディネーターを務めた。 また実際の事件における心理学的鑑定では、乳児に対する虐待死亡事件において被告人の行為を目撃したという児童養護施設出身少女の証言に関して、虚偽を述べる可能性が窺われ、供述に体験性を欠いているという指摘をした予備考察を5月付で弁護団に提出した。次いで日野町事件第3次再審請求弁護団の求めに応じて、証人の言い回しに関してこれまでに分析した結果を再検討し、形式的・内容的分析のいずれにおいても証人が語る内容を適切に引き出すためには尋問・応答形式ではなく、問わず語りに述べる必要があると結論付けた意見書を1月付で提出した。 これらの心理学的鑑定を通じて、更生保護ピアサポート活動以前に、当事者が述べる事実関係の虚実をいかにして確認するべきかという支援の前提となる課題を十分に踏まえなくてはならないという問題意識へ到達することとなった。 海外調査においては、9月にフィンランドとノルウェーの当事者活動の実態を前年度に引き続いてより詳細に聞き取ったほか、3月にはカナダBC州ヴィクトリアにおいて、前年度とは異なり州単位でのアンクレット監視装置を含む支援の実態を調査し、加害者・被害者双方の支援者が協働する修復的司法の一端を見ることができた。国内では北海道大学付属図書館を複数回訪問して、少数民族の更生保護に関する文献調査を行った。
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