研究課題/領域番号 |
16K03380
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川村 力 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (70401015)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 法人 / 経済史 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画の二年度目にあたり、前年度に行った法人理論の私法上・公法上の制度的前提の整理を踏まえ、研究の本体にあたる作業に没入した。その作業は、しかし、まずは第一に、法人の概念及び理論の歴史的基礎の調査・検討が端緒となりかつ折り返されるべき対象となるはずであるが、他方で第二に、それら概念・理論が成立した社会における経済構造と経済秩序、及びこれらを検討する文献とその積み重なりである史学史とをもまた、ー第一の対象を常に念頭に置きつつー前提として要請することになる。 このうち第一の作業については、前年度に引き続いて、「教会」概念の形成に関わる初期キリスト教神学について、とりわけ古典期の哲学との関係を検討した。 他方で、本年度は、論理的に前提と成る第二の作業にとりわけ重点を置いた。そこではまず、19世紀末以来常に現代の経済構造との対比において、常に経済史の論争対象となってきた古典期の経済構造をまずは検討することとし、政治・デモクラシーを軸とした社会秩序において、手始めに、その転換点となる紀元前6世紀に着目し経済秩序がどのような関係を有したかについて分析を行い、その成果の一部を"L'organisation de l'espace en Grece a la fin du VIe siecle"にまとめた。また、以上の作業と並行して、さらに分析を精緻化し、かつ現代社会までを含めた通史的な分析へと射程を広げるための方法論的な検討を行い、その中ではL. Gernetをはじめとするフランスの社会学・神話学を基礎とする歴史学と、イタリアのE. Leporeをはじめとする史料批判と領域の構造の変遷に着目する歴史学との、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は法人を対象とするものではあるが、その意義を政治・経済秩序構想の中に位置づけることで現代の問題状況に応接しようとするものであるため、歴史学の作業に一定程度立ち入らざるを得ない。今年度は、法人理論そのものの作業は大きくは進められなかったが、最も大きな作業となる歴史学研究については、第一に本格的な作業を軌道に乗せることができ、また第二に、暫定的であるとはいえ、一定の形に作業をまとめることもできた。したがって、全般的には、現段階では概ね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
法人理論においては法学的な議論の積み重なりを把握していく作業が必要となること、また本研究でも重要な位置を占める経済史、とりわけ古代経済史においてはローマが大きな位置を占めることから、今後はローマ史及びローマ史学についても研究を進める必要がある。したがって、今後の研究においては、本年度まで行ってきた研究に、それとの偏差を計測しつつ、ローマ研究の比重を増やしていくことを想定している。また、研究期間も後半に入ることから、研究の全体を一定の成果にまとめることを念頭に置いて、近代との関係についても検討を行うこととする。
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