研究課題/領域番号 |
16K03388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
垣内 秀介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10282534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 少額手続 / 簡易手続 / 裁判外紛争処理 / ADR |
研究実績の概要 |
平成29年度において公表することができた主要な研究実績としては、①韓国におけるADRないし消費者紛争処理手続に関する調査結果、②任意的訴訟担当における授権要件の意義をめぐる検討、③現行民訴法制定・施行後の民事訴訟審理の状況の総括、④訴訟上の和解の運用をめぐる現状の分析が挙げられる。 以上のうち、①は、韓国におけるADR機関や消費者紛争処理手続をめぐる運用及び立法の動向を調査したものであり、訴訟手続の利用状況の面で日本との間には大きな違いがあるとはいえ、行政機関と民間機関の役割分担のあり方など、日本における今後の少額紛争処理手続のあり方を考える上で、参考になる点がある。 また、②で検討した任意的訴訟担当の問題は、直接には民事訴訟の判決手続における当事者適格に関わる問題であるが、従来から指摘されているように、訴訟担当の制度は、個々の権利者が自ら当事者として訴訟追行をすることが現実的でない少額多数紛争における裁判へのアクセス手法としても重要性を持つものである。そこで検討した授権要件の意義の問題は、いわゆるオプトアウト型の集団訴訟といった手法を評価する上でも、意味をもつ。 次に、③においては、とりわけ今世紀に入って進められた司法制度改革の成果として司法をめぐる人的基盤が大幅に拡充されたにもかかわらず、民事訴訟の新受件数は大幅には増加しておらず、審理期間の面ではむしろ状況が悪化している現状を確認し、その改善の方向性を模索した。こうした裁判手続をめぐる時間的・経済的コストの問題は、とりわけ少額紛争において顕著な形で作用するものと考えられる。 最後に、④においては、訴訟上の和解に関して、とりわけその運用状況の歴史的推移を確認するとともに、相対的に少額紛争を多く扱っている簡易裁判所の実務に関して、地方裁判所におけるのとは異なる動向が存在することを指摘するとともに、若干の政策的提言を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度においては、平成28年度に開始した作業を継続しつつ、比較法研究に関しては、アメリカ合衆国に重点を置いた調査・検討を行うこと、日本法に関しては、前年度に開始した分析作業を継続しつつ、ADRをめぐる議論及びそこでの民事実体法の機能のあり方をめぐる議論に焦点を当てた検討を行うとともに、それらの検討を踏まえた理論的視座の構築に取り組み、各論的提言の具体化作業の準備を行うことを予定していた。 これらのうち、アメリカ合衆国における状況の分析については予定通り着手し、また、2016年にソウルで開催されたメディエーションに関する国際会議において同国からの参加者と意見交換するなど、一定の進展をみることができた。もっとも、本来計画していた現地調査については、日程調整上の問題から実施ができなかった。 他方で、後者の日本法に関する検討については、研究実績の概要において述べたように、その一部については、当初の想定よりも若干早い形で成果を公表することができている。 以上の通り、現時点での進捗状況としては、当初予定との比較において、若干遅れている部分と一部早まった部分とが混在しているといえるが、これらを総合すれば、全体としておおむね順調に進展していると評価するのが相当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、研究計画の最後の年度となるため、すでに着手している調査・研究を加速し、日本法の分析結果に基づいて得られた理論的視座と、比較法的研究から得られた知見とを対照させつつ、日本のおかれている種々の前提条件をも踏まえた解釈論上・立法論上の提言をとりまとめることとしたい。 また、比較法研究に関しては、前年度までに実施できなかった現地調査が実施することができるよう、日程の確保に努めることとしたい。 なお、今年度においては、授業(演習)においても少額紛争処理手続の問題を取り上げており、これも、研究推進の1つの契機として活用することを考えている。
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