研究課題/領域番号 |
16K03390
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 貴仁 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (30334296)
|
研究分担者 |
後藤 元 東京大学, 大学院法学政治学研究科 (法学部), 准教授 (60361458)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 会社法 / 金融商品取引法 / 資本市場法 |
研究実績の概要 |
研究代表者の加藤は、日本版スチュワードシップ・コード(以下「Sコード」)とコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)が我が国の上場会社のコーポレートガバナンスに与える影響を、主に理論的な観点から分析した。特に、SコードとCGコードが上場会社のコーポレートガバナンスに影響を与える経路に着目することで、SコードとCGコードが期待された機能を果たすためには機関投資家による積極的な行動が必要であるにも関わらず、両コードは機関投資家の行動を変化させるという点では限界があることを明らかにした。また、株主代表訴訟や適格消費者団体による種々の訴訟活動を企業活動の規律を目的とした訴訟手続として位置づけ、以下の2点について検討を行った。第1に、これらの訴訟を機能させるためには原告となる株主などの経済的インセンティブを補う制度が必要であるが、そのような制度は同時に濫用的な訴訟を引き起こす可能性があること、第2に、訴訟手続の利用促進と濫用防止のバランスをいかに図るかという点で、アメリカ法が参考になること、である。 研究代表者の後藤は、Sコードの国際的な位置づけについて、以下のような研究を行った。第1に、日本の上場企業に対する外国人投資家の発言力は、株主構成の変化と近年のガバナンス改革により強まっていると考えられるところ、それが企業価値にどのような影響を及ぼしているかについて、実証研究のレビューを行なった。第2に、日英のスチュワードシップコードについて、それぞれの制定過程の詳細な分析を通じて、両者は表面的には類似しているが、その目的は、日本では国内機関投資家に株主利益を意識した行動をとらせることであるのに対して、イギリスでは株主利益を抑制することにあったことを明らかにし、この違いを踏まえて、それぞれのスチュワードシップコードの限界を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の加藤及び研究分担者の加藤は共に、平成28年度に行った研究の成果を論文や研究報告の形で公表することができた。また、平成28年度に行った研究の成果の中には、同年度中に公表できなかったものがあるが、これらについても平成29年度中に論文として公表することが予定されている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は本研究課題の最終年度であるから、研究代表者の加藤及び研究分担者の後藤は共同して、いくつかの問題について立法論的提言を行うことを予定している。提言の形は単独又は共同の論文または研究報告を予定しているが、以下のように大まかな役割分担を定めることによって、研究活動を効率的に進めたい。第1に、加藤は上場会社と機関投資家の間で生じる紛争解決および対話の促進に関する立法論の検討を担当し、後藤は株主権(特に株主提案権と株主代表訴訟の提起権)の適正行使を確保する仕組みに関する立法論の検討を担当する。第2に、両者の検討結果を相互に批判的に検討する。第3に、加藤又は後藤が共同して又は単独で参加する各種研究会で立法論を提起する機会を得ることで、研究成果の洗練を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予約発注を行った複数の洋書の刊行時期が遅れることが年度末直前の時期になって明らかになったため、次年度使用額が生じることになった。これらの洋書の多くは平成30年度に刊行される予定であり、次年度使用額をその取得に用いる予定である。
|