研究課題/領域番号 |
16K03397
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小林 道生 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60334950)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保険業法 / 保険募集 / 保険募集規制 / 情報提供義務 / 比較推奨 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績としては、小林道生「新たな保険募集規制と情報提供義務」静岡大学法政研究22巻1号1頁以下をあげることができる。これは、補助事業期間初年度(平成28年度)からの継続的課題に取り組んだ成果である。 平成26年の保険業法改正(保険業法等の一部を改正する法律 平成26年法律第45号)は、金融庁の監督指針を含む保険募集規制全体のありようを整理し直し、顧客に対する行為規制の側面では、法令上、保険会社、保険募集人に募集プロセスにおける積極的な対応を求める規制を新たに導入し(「情報提供義務」、「顧客の意向把握義務」の導入。保険業法294条1項、同法294条の2)、さらに、体制整備の側面についても、保険会社が監督責任を負う従来の募集人規制に加え、保険募集人にもその業務の特性や規模に応じて、体制整備を義務づけることにした(保険業法294条の3第1項)。 上記の論文では、平成26年保険業法改正によって導入された保険業法294条1項の情報提供義務について、平成26年改正保険業法に係る政府令・監督指針案に対するパブリックコメント手続で寄せられた意見や質問への金融庁の回答を踏まえ、新たな保険業法施行規則(保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令 平成27年内閣府令第40号)の関連諸規定の詳細を明らかにしたうえで、情報提供義務に関わるいくつかの論点を考察した。すなわち、保険業法294条1項の情報提供義務と同法294条の2の顧客の意向把握義務や同法300条1項1号の重要事項の不告知禁止規定との関係、また、300条1項1号の重要事項不告知禁止規定の今後の顧客保護に果たす役割のほか、複数保険会社の商品を扱う乗合代理店が行う商品の比較推奨時における情報提供義務の内容の具体化に関し検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題を進めるにあたっては、平成26年改正保険業法のもとでの新たな保険募集規制に関わる重要論点を検討対象として取り組んでいる。昨年度は、平成26年改正によって導入された保険業法294条1項の情報提供義務について検討し、論文にまとめることができた。今後は、平成26年改正の際に、情報提供義務と並び、顧客に対する行為規制として導入された「顧客の意向把握義務」(保険業法294条の2)について考察する予定である。 もっとも、一方で、最近の民事法分野における最高裁判例の出現により、研究実施計画策定時には顕在化していなかった消費者契約法上の論点と保険募集規制との関わりについて、自らの問題意識を明らかにしつつ可能な限り早急に取り組むべき必要が生じており、本研究課題の進捗状況について上記の区分による評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を進めるにあたっては、順次、平成26年改正保険業法のもとでの新たな保険募集規制に関わる重要論点を検討対象に取り組んでいく。さらに、論文執筆の際には、研究実施計画策定時には必ずしも意識していなかった問題についても、その所在や意義を明らかにすることから始めていきたい。 このような見地に立ち、平成30年度に実施する研究としては、最近の最高裁判例(最判平成29年1月24日民集71巻1号1頁)を契機として、消費者契約法における勧誘規制との比較という視点から、保険募集の意義について再検討を試みることを予定している。具体的には、上記最高裁の判断によれば、事業者による不特定多数の消費者に向けた保険商品の広告、チラシの配布も、消費者契約法上の「勧誘」に該当しうると理解されることから、それが保険募集の意義をめぐる議論(金融庁の監督指針では、商品案内チラシの配布、広告を掲載する行為は保険募集に該当しないとされる)にどのような影響を与えるのか考察することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 所属研究機関から配分を受けた研究費(運営費交付金分)の金額が従来の想定よりも多額であったため、支出が抑えられたことによる。 (使用計画) 所属研究機関の勤務の日程上可能であれば、海外(ドイツ)への出張を考えている。
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