平成26年の保険業法改正は、保険募集規制全体のありようを整理し直し、保険会社、保険募集人に募集プロセスにおける積極的な対応を求める規制を新たに導入した(「情報提供義務」、「顧客の意向把握義務」の導入)。「新たな保険募集規制と情報提供義務」静岡大学法政研究22巻1号1頁(2017)では、平成26年保険業法改正によって導入された情報提供義務を対象に、関連する保険業法施行規則の詳細を明らかにしつつ、顧客の意向把握義務との関係などの論点について考察した。 また、保険募集の意義に関し、最判平成29年1月24日民集71巻1号1頁を契機にして、商品のチラシ配布や広告の掲載も、当該行為に従事する主体によっては保険募集に該当する場合があるといえるのではないか、上記最高裁判決を踏まえた議論が保険募集の意義(「保険契約の締結の勧誘」の意義)を考えるうえで示唆するところはないか考察した(「消費者契約法における『勧誘』、『媒介』と保険募集の意義」静岡大学法政研究23巻3・4号57頁(2019))。 そのほか、EUでは、加盟国間における保険販売規制の調整、金融分野横断的な消費者保護の強化を目的として、2016年2月に「保険販売業務指令(Insurance Distribution Directive)」(以下、「IDD」という)が発効するに至った。これを受けてドイツにおいても保険販売規制に関し、保険契約法、保険監督法等において所要の改正が行われた。令和4年度に実施した比較法研究では、まず、IDDの全体的構成を把握のうえ、個々の条文がドイツにおけるどの法令の規定に位置づけられたのかを確認し、国内法化された主要な規定の邦訳作業を進めた。また、ドイツ保険契約法のコンメンタールを参照し、IDDの国内法化を受けた保険契約法の改正規定の規制内容について、その由来となるIDDの規定とあわせて理解に努めた。
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