研究課題
本研究課題は、国家以外の様々なアクターによって規範が設定され、その規範が一定の法的な効力を有するという現象を法の「私化」という概念をもって把握し、民事法の視角から分析を加えるものである。研究の遂行方法として、「私化」という現象を把握するための枠組みを検討する理論的・総論的な分析と、民事法の諸領域における具体的な問題に即した各論的な分析を並行して進めるという方法を採用している2018年度は、理論的・総論的な分析として、民事法領域における一般条項の意義・機能に関する検討の成果を、信義誠実の原則(民法1条2項)に関する総合的な研究として取りまとめ、『新注釈民法(1)』の一部として公表した。本研究課題の視角からみると、一般条項は、国家以外のアクターが設定する規範を法の世界に取り込むための手段と位置づけられるのであり、そこで提示した分析、および、信義誠実の原則に関する裁判例の分類枠組みは、本研究課題全般にかかわる意義を有していると考えている。さらに、2018年度は、2017年の民法(債権法)改正を本研究課題の視角から一般的・俯瞰的に分析する英語論文も公表した。そこで提示した枠組みは、民法(債権法)改正に関する研究代表者の他の論稿・解説にも反映されている。2018年度における各論的な分析の成果としては、研究代表者が進めてきた事情変更法理に関する研究の延長上に位置づけられる論稿を公表した。さらに、規範の形成にもかかわるアクターとしての重要性を増している、プラットフォーム業者の責任に関する報告を国際会議において行なったほか、保険契約に関する問題について民事法の視角から検討する研究報告も行なった。
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Zeitschrift fuer Japanisches Recht / Journal of Japanese Law
巻: Sonderheft Nr. 14 ページ: 27-39