研究課題/領域番号 |
16K03402
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 利一 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60273869)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 裁判所 / 倒産法 / アメリカ法 / 手続機関 / 私的整理 / 法的整理 / 権利保護 |
研究実績の概要 |
平成28年度日本民事訴訟法学会大会シンポジウム「倒産法と優先順位」(取り纏め:松下淳一教授(東京大学))において、パネリストとして「Ⅲ相殺期待の合理性について」の報告を担当し、その成果が学会誌に掲載された。木内道祥先生古稀・最高裁判事退官記念論文集『家族と倒産の未来を拓く』(きんざい)の編集事務局に参加し、「倒産法における債権者平等原則の意義―アメリカ法の沿革を手掛かりに」を寄稿した。私的整理の多数決という問題につき、Oxford大学Jenifer Payne教授を招へいしイギリス法の知見を紹介し、雑誌・季刊事業再生と債権管理に発表した。大阪地裁倒産部の裁判官および大阪弁護士会の倒産弁護士の方々との研究会の成果として、座談会(司会:藤本利一)「民事再生手続の再活性化に向けて(上)・(下)」を雑誌・NBLに発表した。全国倒産処理弁護士ネットワーク第16回全国大会「パネルディスカッション 否認における支払不能の意義と機能―適正な私的整理の実現のために―」のコメンテーターを務め、その成果が雑誌・季刊事業再生と債権管理に掲載された。池田辰夫教授退職記念号に「アメリカ債権回収法における執行力の研究序説―コモンローのDormant法理を手がかりに―」阪大法学を寄稿した。大阪弁護士会司法委員会倒産法部会「倒産法実務研究会」において、「相殺期待の合理性について」と題する講演を行い、東京三弁護士会及び大阪弁護士会(共催)のシンポジウム「債権法改正と倒産法」において最終コメントを担当した。弁護士(元東京高裁判事)、民間企業代表者、外資系金融機関の執行取締役、倒産弁護士を招へいしミニシンポジウム「事業再生における債権者と債務者の関与の実像~倒産法制の歴史に遡って考察するわが国の事業再生」を大阪大学において開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内外の研究文献を収集・整理し、当初予定通り、事件管理に関する文献について、研究を進めている。ただ、申請段階で予想したよりも外国図書の費用が高騰しており、文献の入手にかかる研究費の捻出に若干苦労している。 国内の裁判官、弁護士の方々との研究交流は、比較的順調に進んでいる。たとえば、顧問として関与している大阪倒産法実務研究会(大阪弁護士会)には、多数の弁護士だけでなく、倒産法研究者や裁判所からも参加者が存在する。また、幹事を務める「大阪倒産実務交流会」には、倒産事件を扱う法曹のみでなく、金融機関等の法律家以外の知見を有した参加者も存在し、多様な意見を聴取することができる。こうした成果を踏まえて、研究会やシンポジウムにおいて、研究途中のものではあるが、その成果について公表する機会を得た。 ただ、平成29年度は、本務校において、入試関係委員会の長として職務を遂行することとなった関係で、海外に出張して、国外の研究者や実務家と「裁判所による事件管理」について意見交換を実施することができなかった。そのため、アメリカでの調査結果を踏まえ、倒産事件管理に関する研究報告を中間的な取り纏めとして実施する予定であったところ、かかる研究報告を実施することができなかった。もっとも、日本法に関する関連した報告は、上述のように、弁護士会や日本民事訴訟法学会等において実施することができた。また、中間的取り纏めとしての研究論文を阪大法学に公表できておらず、関連するテーマでの投稿にとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
1 文献の収集と分析:引き続き、アメリカ法を中心に本研究にとくに密接に関連する文献資料を入手し、それらに対する分析を行う。今年度は、事業遂行可能性に関連する文献を中心とする予定である。 2 日本の倒産実務家へのインタビュー調査:引き続き、倒産実務家が参加する種々の研究会を通して、本研究課題に関連する事項につき、意見交換を進めていく。これまでは大阪地域が中心になっていたけれども、今後は、大阪地域外の倒産実務家との交流やインタビュー調査を実施していきたい。そのために、近畿弁護士連合会の研究会や、全国倒産処理弁護士ネットワークの枠組みを活用できればと考えている。前年度までの成果を踏まえ、とくに今年度は、事業遂行可能性に関するテーマを中心にインタビューを行うよう努める。 3 海外における文献調査・インタビュー調査:海外の主要大学において、とくにアメリカ合衆国を中心に、倒産法に関連する文献資料の収集を行うことを予定する。とくに、アメリカ法における事業遂行可能性判断に関するものを主たる対象とする。それとともに、昨年度実施できなかった、アメリカの倒産法研究者、倒産実務家へのインタビュー調査を行うことを試みる。主として扱うのは、事業遂行可能性に関するテーマである。 4 研究会での中間報告と論文投稿:倒産法研究者のみならず、倒産実務家を交えた研究会において、アメリカ等海外での調査結果を踏まえ、裁判所による事業遂行可能性判断に関する研究報告を中間的な取り纏めとして実施する予定である。研究者や実務家との意見交換により、研究の成果がより確かなものとなり、それを踏まえて、大学紀要(阪大法学)に中間的な報告文献を投稿することを企図する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも、海外等からの文献の取得費用が嵩んだことが1つあげられる。円安の影響もあった。また、3月下旬に、弁護士(元東京高裁判事)、民間企業代表者・取締役・代理人弁護士、外資系金融機関の執行取締役、倒産弁護士を招へいし、ミニシンポジウムを大阪大学において開催した。テーマは、「事業再生における債権者と債務者の関与の実像~倒産法制の歴史に遡って考察するわが国の事業再生」というものであり、倒産手続における裁判所の役割を、債権者、債務者の視点から検討することを目的とするものであった。かかる研究会は当初、平成30年度春に実施を予定していたが、報告者・参加者の都合により、3月下旬実施となったため、その開催に関連する費用の支出について前倒しを迫られることとなった。しかし、民間企業関係者合計4名の旅費と謝金について、辞退の申し出があり不要となったため、残金が生じることとなった。この残金については、日本語文献を購入する予定としている。
|