研究課題/領域番号 |
16K03402
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 利一 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60273869)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 倒産裁判所 / 倒産法 / アメリカ連邦倒産法 / 倒産裁判官 |
研究実績の概要 |
本研究の研究計画を起点として研究を鋭意進めつつ、関連する研究成果として、藤本利一「倒産法と担保法の交錯―イギリスとアメリカの経験」共栄法律事務所編『共栄法律事務所創立20周年記念論文集 法の理論と実務の交錯』(法律文化社、2018年10月)315頁-334頁)を公表した。この論攷は、19世紀末のイギリスの裁判所が包括担保を肯定する判決を行ったことに対し、20世紀初頭のアメリカ合衆国の連邦最高裁判所が、包括担保を否定したことで生じる、その後の両国の変遷を検討したものであり、裁判所のあり方が、英米でかなり異なっていること、またイギリスの裁判所との差異を意識することで、アメリカの裁判所の姿勢が浮き彫りにあることを明らかにしようとしたものである。 またInternational Symposium on Personal Insolvency Legislation and Business Environment(北京:中国法学会銀行法学研究会主催、中国国際貿易推進委員会、世界銀行、APEC中国工商理事会共催)において、アメリカ法に由来する日本法の破産免責法理の濫用について研究報告を行った。破産免責の必要性と、その制度の負の側面でもある濫用事例の存在について、制度の沿革を踏まえつつ、倒産裁判所の果たす役割を出発点として論じた。 さらにオックスフォード大学・Jennifer Payne教授・Louise Gullifer教授(イギリス)らと、同マートン校において、「日英事業再生のこれから」というミーティングを持った。イギリスにおいて展開される事業再生を巡る種々の方策について、世界水準にあるそれらの議論を日本法に導く魁けとなることを企図したものであったが、現在かの地においても、裁判所の役割が論じられ、その際には、アメリカの裁判所論が参照されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定しない研究活動が必要になったからである。すなわち、先に述べた中国での国際シンポジウム報告(2018年6月実施済み)、また、大阪大学内部研究資金を利用した、イギリスでの国際的な研究会合の主催(2019年3月実施済み)、東京弁護士会・第一東京弁護士会・第2東京弁護士会・大阪弁護士会の合同シンポジウム「倒産法における優先と劣後」(2019年4月実施済み)において、基調講演とパネルディスカッションのパネリストとして、参加することとなった。ただし、いずれの用務も、本研究(倒産法における倒産裁判所の役割等の考究)との連関が合理的に見て存在するものであることを付言したい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度においては、アメリカ合衆国でのヒアリング調査を鋭意実施する予定である。裁判所論を研究している理論研究者だけではなく、かの地の現場の倒産実務家、弁護士や裁判官などに対するインタビューなどを実施したいと考えている。アメリカ法における倒産事件の手続管理に関するものだけではなく、事業遂行可能性に関する種々のトピックについても対象としてみたい。また、国内における倒産実務家に対するヒアリング調査は、原則として、大阪と東京を中心としつつ、引き続き実施することとし、アメリカでの調査結果との対比を行いながら、一定の成果を導きたいと考えている。倒産法理論研究者のみならず、倒産実務家を交えた研究会を実施し、そこにおいて、アメリカ法の研究を踏まえ、倒産手続における裁判所の役割に関する研究報告を中間的な取り纏めとして実施する予定である。日米、その他諸国の研究者や実務家との意見交換により、研究の成果がより確かなものとなり、それを踏まえて、大学紀要(阪大法学)に最終の研究成果となる論文を投稿することを企図している。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍の出版が年度を跨いだため、支出が完了しなかったことによる。
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