研究課題/領域番号 |
16K03402
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 利一 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60273869)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 倒産法 / 倒産裁判所 / 相殺 / 裁判所の役割 / 三者間相殺 |
研究実績の概要 |
相殺権が認められるために必要な「相互性」の要件について、その英米法の沿革を踏まえつつ、Lehman Brothers事件およびOrexigen Therapeutics事件への適用を検討し、倒産手続における三者間相殺の合意の効力を認めまたは否定することの、倒産法政策上の意味を探求し、倒産裁判所の役割を考究した。このことに際しては、イリノイ大学ロールクールのラルフ・ブルーベーカー教授と意見交換を行うなどして、そのご助力を得た。その成果は、藤本利一「三者間相殺の合意(1)――相互性要件に関する理解(誤解)<翻訳>」阪大法学71巻1号271頁~300頁(2021年5月)、藤本利一「三者間相殺の合意(2・完)――契約による相互性と契約による優先権<翻訳>」阪大法学71巻2号329頁~363頁(2021年7月)として公表されている。 こうした研究成果を踏まえ、日本法に関しては、日本民事訴訟法学会支部研究会において、「倒産法における相殺権の規律――近時の重要判例を踏まえて」と題する研究報告を行った(2021年6月)。ここでは、主として、2つの最新判例、一つは、三者間相殺の可否について判示した、最二小判平成28・7・8民集70巻6号1611頁であり、今一つは、請負事案をもとに、「前に生じた原因」(破産法(以下、法令名省略)72条2項2号)について判断した、最三小判令和2・9・8裁時1751号4頁である。これらを中心として取り上げ、解釈論的検討を加えるとともに、裁判所の役割に関して言及することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究のとりまとめとして、海外の実務法曹および研究者に対するヒアリング調査を実施する予定であるが、コロナ禍のため、適切な実施ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、日本の倒産実務家、また倒産事件を担当する裁判官への調査を試みる。その上で、アメリカの倒産実務家、研究者に対するヒアリング調査を実施したいと考えている。 もっとも、コロナ禍のため、現地に赴くことが難しいことも考えられる。その場合は、web会議等のシステムを利用することを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、アメリカ合衆国を訪問し、実証的調査を行うことができなかったこと、また、その前提となる日本の倒産実務家とのインタビューなど、直接的な交流の機会を十分に持てなかったためである。
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