新型コロナウイルス感染症拡大に伴う温情措置により、研究期間を再々延長していただいたが、2022年度も、感染症リスクおよびロシアのウクライナ侵攻等によって地方都市からの海外渡航は引き続き容易ではなかった。そのため、海外現地調査および海外研究者の招聘・交流を研究計画の柱としていた本研究課題は負の影響を受け続けた。 研究手法は、もっぱら国内で入手可能な内外文献の収集と内容の把握・批判的分析に限られた。海外研究者とのオンラインでの交流の機会を模索したが、残念ながら実現することはなかった。内外文献については、本研究の関心にピンポイントでアプローチするものはほとんどないため、一般的なAI、DXに関する文献を含め膨大な数の資料を収集し、振替株式に関する権利取得、権利移転および権利行使の問題への応用可能性を検討しつつ、少しずつ読み進めている。 助成期間中の中間的研究成果としては、「株主総会プロセスの電子化-対話促進のための課題と展望」砂田太士=久保寛展=髙橋公忠=片木晴彦=徳本穣編『企業法の改正課題』法律文化社(2021年)があるほか、「議決権基準日を定めない株主総会における招集通知後の株式譲受人への再招集通知の要否」月刊税理第66巻第1号(2023年)においては、裁判例を素材としつつも、振替株式発行会社における電子提供措置の義務化を踏まえた株主総会招集通知の意義を考察し、新たな解釈論の可能性に触れた。本研究は、最終研究成果の公表には至っていないものの、上記中間成果および収集済みの内外文献の知見を幅広く盛り込みつつ、より厚みのある研究成果の早期公表に向けて鋭意努力していく所存である。
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