研究課題/領域番号 |
16K03410
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
山下 純司 学習院大学, 法学部, 教授 (90282532)
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研究分担者 |
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
金子 敬明 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80292811)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 相続 / 遺産分割 / 監督者責任 / 私的自治 / 身分法 / 意思 / 協議 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、親族・相続法における意思・合意・協議の問題を横断的に検討し、身分法における公私の関係や、私的自治の原則の限界について考えるものである。平成28年度は、関心あるテーマを持ち寄って議論をする2回の研究会を開催した。 第1回研究会(平成28年8月4日)では、研究分担者金子が、遺産共有をテーマに報告を行った。共同相続された財産の中に可分債権が含まれる場合、その債権は相続により当然分割され、遺産分割協議の対象とならないというのが判例であるが、近時の最高裁は、投資信託受益権はこうしたルールの射程外とするなど(最判平成26年2月25日民集第68巻2号173頁、最判平成26年12月12日集民第248号155頁)、判例ルールの射程を限定している。金子報告は独自の視点から分析を行い、特に銀行預金債権について、遺産分割協議の対象とすべきという解釈論及び立法論上の主張を行った。本報告後に最高裁は同旨の判示を行い(最大判平成28年12月19日)、主張の方向性の正しさが証明された。 第2回研究会(平成28年3月13日)では、研究分担者久保野が、不法行為責任と家族の関わりをテーマとした報告を行った。民法714条の監督者責任について、近時最高裁は監督義務の内容や法定監督義務者の範囲について重要な判示を行った(最判平成27年4月9日民集69巻3号455頁、最判平成28年3月1日民集70巻3号681頁)。久保野報告はこれらの判決を契機に、家族が監督者として不法行為責任を引き受ける根拠や範囲について考察を行った。報告後の議論では、配偶者の婚姻を継続する意思の中に、監督者として責任を引き受ける意思を読み込むことは可能かなどの問題が話し合われた。 いずれの報告も、近時話題の法律問題について、課題に沿った問題意識から考察するものであり、研究は順調に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成28年度は身分法と私的自治の関係に関する基礎研究をメインとして、具体的課題の分析は平成29年度以降に行う予定であった。しかし、共同研究においては問題意識をすり合わせることも重要と考えられるため、まず具体的課題のいくつかについて、先行して検討を行うこととした。このため、当初計画とはやや研究の進め方が異なってきている。 もっとも、研究実績の概要でも述べたように、研究会において取り上げたのは、本研究課題に密接に関連する近時話題の最高裁判例であり、最先端の法律問題である。このような法律問題を検討したことは、共同研究者間の問題意識をすり合わせ、かつ先鋭化することに役立った。この点では、基礎研究と同様の効果があったともいえ、研究の進展度合いとしては順調と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のテーマは、身分法と私的自治の関係の考察であり、そのための具体的作業として、親族・相続法を中心に、家族や財産承継の問題と、意思・合意・協議の問題が交錯する領域を、横断的に検討していく。今後も年に数回の研究会を開催し、関連する領域についてできるだけ多くの検討を行う予定である。 また、当初計画で平成28年度に予定していた、身分法と私的自治の関係に関する基礎研究は、具体的問題の検討と並行しながら行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、研究分担者金子の所属機関移籍などもあり、当初想定していたよりも研究会の開催頻度が少なくなった。このため、旅費の支出が少なくなるなどで若干使い残しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画通りに研究会を開催し、研究を進めていく過程で、必要に応じ使用していく。
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