研究課題/領域番号 |
16K03411
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
工藤 敏隆 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (50595478)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 事業再生 / 再建型倒産処理手続 / 事業譲渡 / イギリス倒産法 |
研究実績の概要 |
日本法の議論状況の把握として、民事再生法や会社更生法における関連文献の収集と分析を行った。また、平時の会社法における組織再編に関する文献についても、一部分析に着手している。 外国法の議論状況の把握として、当初の計画では、主にアメリカ法を対象とし、他の法域の議論は補充的に参照することとしていたが、これを若干修正し、イギリス(イングランドおよびウェールズ)法も主要な比較対象に加えた。これに至った動機は、アメリカ法や日本法の計画外事業譲渡が、裁判所の許可権限を後ろ盾に実行されるのに対し、イギリス法における、いわゆるプレパッケージ型管理(管理人選任前に、債務者と買受人との間で企業資産の全部または一部の売却について予め交渉を済ませ、これに基づいて管理人が選任されると同時または直後に売却を実行する方法により行われる会社管理)は、担保権者と債務者の私的交渉のいわば延長線上にあり、対極的視点を提供するものと考えられたためである。 そこで本年度は、イギリス法における会社を対象とする倒産処理手続(会社管理、会社整理計画および会社任意整理)の状況を把握するとともに、特にプレパッケージ型管理の史的展開や現在の問題点を重点的に調査することとし、関連文献の収集・分析や、研究会への参加等を行った。その結果、プレパッケージ型管理がイギリスにおける事業再生の主流として広く利用されている一方で、手続の透明性等について批判的な論者もあり、新たな法規制の必要性を検証するための実証分析が行われたことなど、最近の興味深い議論について知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較対象の外国法にイギリス法も加え、本年度はその調査分析に時間を要したが、その一部を成果としてまとめる目処が立ちつつある。その過程で生まれた問題意識をアメリカ法の調査・分析にも反映させることにより、研究は当初の予定どおりに進展可能と見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、主としてイギリス法におけるプレパッケージ型管理を取り上げ、事業再生の主流となるに至った経緯や、それに伴い指摘されている問題点を中心に、これまでの調査結果を論文の形にまとめる予定である。 上記と並行して、アメリカ法における計画外事業譲渡(「363セール」)について、文献資料の調査や、現地の研究者および実務家に対するインタビュー調査を通じた現状分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はイギリス法の調査を中心に行い、アメリカ法に関する調査を次年度に行うこととした。そのため、物品費や旅費の支出が計画を下回ったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費および消耗品費に充当する予定である。
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