①平成30(2018)年度の研究実績としては、『養子法の国際比較研究』(鈴木博人・中央大学教授編)において、イタリアの養子法制度の部分を執筆したことを挙げることができる。本書は、2019年6月頃に明石書店から出版される予定であり、現在は初稿の校正中にある。 本書は、養子制度に関する書籍ではあるが、イタリアでは婚外子が養子に出された歴史を持つ。そのため婚外子の法制度と養子法制度の研究は切り離せないものである。本書の執筆により、イタリアにおける養子制度の全体の概要を示すことができたことはひとつの大きな成果と考える。イタリアでは、未成年者裁判所の判決を経ずには、国内養子を行うことはできない。また未成年者裁判所における養子縁組の裁判においては、実親、養親および子の代理人による対審手続きにより行われることにより、当事者の利益が確保されることも明らかとなった。さらに子には、公費で弁護士が選任されることにより、子の利益を保障する制度となっている。 またイタリアでは国際養子縁組も多く行われていることが明らかとなった。イタリアはかつては、養子を送り出す国であったが、現在ではアメリカ合衆国に次いで、国際養子の受け入れ国となっている。本助成を受けて、イタリアの養子法全体を考察できた意義は大きい。 ②その他の平成30年度の研究業績としては、家事裁判例研究「別居前の主たる監護者を監護者に指定しない事情の存否」民商法雑誌第154巻第5号259頁(2018)がある。これは大阪高裁平成28年8月31日決定についての判例研究である。この決定は、別居時の監護者決定の事案であるが、イタリア法では、離婚後も共同監護が原則であり、イタリアは2006年および2013年に、子の利益のために民法を改正している。この論稿では、イタリア法における「子の利益」の視点から、判例批評を行った。
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