本研究課題は,電子マネー・仮想通貨についての利用実態を調査し,立法化の進むEU法を比較対象として,「電子マネー・仮想通貨」に関する法改正・立法へ向けた提案を試みるものである。 前年度(平成29年度)は,この研究目的を遂行するために,(1)フランスにおける預貯金口座に対する振込みをめぐる最新の立法状況を確認し,また,(2)三者以上の相殺に対して影響を及ぼし得る民法(債権関係)改正による新469条2項2号の規定を検討した。 本年度は,この発展として,上記(1)の検討をさらに発展させるとともに,(2)電子マネーに関する消費者問題について裁判例を検討し,また,(3)仮想通貨の法的定義を検討した。(1)については,書籍を分担執筆する機会を得て,欧州決済サービス指令(およびその改正)を国内法化したフランスにおいて,銀行口座振替及び振込みに関する条文の具体的な適用における課題を探った。(2)については,実務にインパクトを与えた裁判例(東京高裁平29.1.18)の研究を通じて,キャッシュレス決済手段が組み合わされる場合に,技術的な複雑さを背景として,その仕組みを十分に理解することが困難な消費者(利用者)が晒されるリスクについて考察し,(3)については,欧州(特にフランス)の仮想通貨に関する最新の議論を参照して,今日では,暗号資産として称される傾向にあることを確認して我が国における仮想通貨の定義について検討を行った。これら(2)および(3)については,いずれも雑誌にその研究成果を公表した。
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