研究課題/領域番号 |
16K03420
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非財務情報の開示 / 統合報告 / 戦略報告書 / 非財務情報報告書 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、イギリス会社法における非財務情報の開示と開示の信頼性確保について、規制の内容を検証し、原稿にまとめる作業を中心に研究を進めた。イギリスでは、2014年のEU指令(Directive 2014/95/EU. 非財務情報の開示等に関する指令)を国内法化するための省令の改正が2016年末に行われており、会社法上の法定開示書類として、従来の戦略報告書に加えて、非財務情報説明書(non-financial information statement)の制度が導入された。また、これと併せて開示情報の信頼性確保のために会計監査役(auditor)の役割が拡大されている。このようなイギリス法における非財務情報の開示規制と開示情報の信頼性確保の制度について、2017年7月15日、上村達男早稲田大学法学学術院教授が主催する研究会(学内外の研究者が参加)で報告し、同年11月下旬までに、その内容を1万字程度の原稿にまとめた。また、その間、関係法令の改正等の調査のため、9月13日から19日まで、ロンドンに出張し、会社法の所轄官庁であるBEIS、金融行為監督機構(Financial Conduct Authority)、ロンドン大学高等法学研究所図書館等において、聴き取り調査を含めて資料の検索・収集等を行った。BEISでの調査は、8月末に公表されたコーポレートガバナンス改革に関する政府案についてのインタビューが中心となったが、有益であった。 他方、南アフリカについては、文献収集とその内容の検討が中心であって、原稿をまとめるところまでは至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリス会社法における非財務情報の開示規制と信頼性確保制度についての研究は、学内の研究会で報告し、その内容を原稿にまとめるところまで進んでおり、併せてロンドンでの調査も実施した。また、イギリスで2016年秋から始まったコーポレートガバナンスの改革作業が、2017年8月末の政府案公表と同年末のFRCのコード改定案の公表に至ったことについて、「英国のコーポレートガバナンス改革案」としてまとめ、2018年2月にDisclosure & IR, vol.4(宝印刷、ディスクロージャー& IR総合研究所)に公表した。もっとも、イギリス法に関する研究の進捗状況と比べると南アフリカに関する研究が遅れているが、平成30年度にはこちらの研究にも注力し、イギリス法との比較という観点も交えて研究の進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度における研究の全体像としては、研究の進展したイギリス会社法関係(既に主要部分に関する原稿を作成)について、現在イギリスで進行中のコーポレートガバナンス改革の影響を折り込むとともに、南アフリカ会社法関係の研究をまとめる作業を併せて進捗させて、これらの研究からのわが国法制への示唆をまとめる計画である。そのためにも、南アフリカ法関係について、少しずつ進めている資料の収集・分析を進展させ、内容をまとめる作業に力点を置きたいと考えている。また、可能であれば、海外調査を行いたい計画であるが、これについては研究費との兼ね合いを考慮しなければならない。現在改革作業が最終段階に入ったイギリスでの調査を再度行うこととするか、南アフリカでの調査を実施するか(かなり費用が高額となるものと予想される。)、研究上の必要性と研究費との関係も考慮して、今年度における研究の進捗状況をみながら実施するか否かも含めて決定する予定である。
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