研究課題/領域番号 |
16K03423
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
本間 靖規 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50133690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家事事件手続 / 家事債務 / 手続保障 / 家事執行手続 / 子供の引渡 / 財産開示 / 執行官 / 家裁調査官 |
研究実績の概要 |
平成28年度は本テーマに関する研究の初年度に当たるため、基本的な作業として資料収集ならびに今後の研究の進め方を含めた本研究に関するインタビュー調査を行った。 本研究は家事債務の執行に関する基礎的研究として比較法的研究をまず行うことにしている。その際、日本に先駆けて家事事件手続に関する立法(FGG-RG,FamFG)を行ったドイツを比較法的研究の端緒とすることにした。ドイツの文献をリストアップし、これを2017年3月にフライブルク大学にて調査した。滞在期間が限られていたため、調査項目総てについての調査ができず、文献を持ち帰って日本において引き続きこれを調べている。またドイツ・フライブルク大学のシュトゥルナー教授、ブルンス教授に本テーマについてインタビュー調査を行った。家事債務の執行については、特に子供の引渡の執行を考えても分かるように、機械的な執行方法をとることはできない。これを行う際、ドイツの法令の骨格はどのようになっているか、執行の際の基本的な留意点は何か等、両教授から有益な助言を得ることができた。また、両教授の所属するフライブルク大学民事訴訟法研究所の助手の援助も得て、文献、判例検索の方法、日本では手に入れることが難しい専門雑誌の存在などの教示を得ることができた。これら資料の読み込みはこれからの課題である。 比較法的研究の第二の国として、台湾を選び、台湾大学での調査も行った。予め日本語で読める文献で対岩に方の知識を得た上、同大学の民事手続法を担当する3人の教授のうち沈冠伶教授、許士宦教授へのインタビューを行った。これを踏まえて台湾法の分析を今後行う予定である。 また韓国ソウルの家庭法院を訪問し、何人かの裁判官に質問する機会を得た。回答の多くは、後に書面で送ってもらうことになっている。その分析も今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家事債務の執行に関する比較法的研究を行うことから始める基礎的研究の第一歩として、まず3カ国に行き、現地の大学ならびに韓国では家庭法院を訪問して、インタビュー調査を行うことができた。またそこで本研究を進める際に当たっての貴重なアドバイスや資料の存在についての教示を得ることができたのは大きな意義があると思われる。さらに今後引き続き調査やその分析を行う際の協力をとりつけることもできた。とりわけドイツ・フライブルク大学民事訴訟法研究所は、本研究に関する全面的なバックアップを約束してくれた。シュトゥルナー教授やブルンス教授といったドイツ有数の教授とのパイプは今後この研究がドイツにおける家事債務の執行を担当する実務の現場などでの調査等を進める際に大きな意義を持ってくるものと考える。 また台湾における調査については、今年度に関していえば、大学での調査に止まったが、こちらも今後は地裁や家裁などでの調査を進めていきたいと思っている。そのため特に裁判としての実務経験が豊かな許士宦教授のサポートを得ることができることは有意義である。 韓国での調査は、家庭法院と養育費履行管理院において行われたが、何れも時間が限られていたため、十分な回答を得るところまで至らなかった。今後も引き続き、両者との関係を保っていきたい。 他方で、調査の結果得られた膨大な資料の読み込みはできなかった。その大きな仕事が平成29年度の課題となる。その進度を考えると予定した所までには行かず、その手前までの進行速度に止まった部分が残った。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的研究としての比較法的研究がまずは3カ国について始まったところである。今後ともこれらの国での調査は続く。収集した資料の読み込みやインタビュー調査の分析、またそこから波及する資料収集調査の必要が出てくるものと思われる。すでにサポート体制を整えることができたこの3カ国調査を今後とも進めていくことになる。幸い、フライブルク大学民事訴訟法研究所は、研究室や文献検索資料収集に全面的に協力してくれるとのことである。また台湾大学も調査の過程で筆者の日本法研究に興味を抱いているとのことで研究交流を望んでいるため、今後とも学術交流の窓をとおして比較法研究の幅を広げていくことが予想される。さらに韓国調査では、韓国最高法院の下にある司法政策研究院での調査協力が得られないか模索しているところである。 今年度は、さらに比較法的研究をフランス法系の国に拡大していきたい。具体的には、フランス、ベルギー、スイスのフランス法圏などを対象に調査の範囲を広げていくこと考えている。これが実現できれば比較法の対象範囲が拡大し、本研究の幅を大いに広げることができる。 筆者は現在同時に、名古屋大学に事務局を置く科研費基盤(A)の国際執行・保全法の研究の分担研究者でもある。この研究は本テーマと関連が深くまた研究チームも民事手続法のみならず国際私法の研究者を多く含むものであることから、幅の広い外国法の研究ができる体制にある。筆者としては両研究の接合をはかり、両研究の同時進展を実現することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
各費目のの効率的な使用を心がけていたところ、未使用分がわずかに生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の補助金と合わせて消耗品費に当てる予定である。
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