わが国の上場株式はすべて「社債、株式等の振替に関する法律」(以下、「振替法」という)に基づく振替制度が適用される振替株式であり、株式の譲渡や株主の権利の行使・管理は同制度のもとで行われている。本研究の目的は、比較法的考察を踏まえながら、かかる振替株式に通底する基礎理論を開明したうえで、それを基盤にして、振替株式をめぐる多数の実務的諸問題につき、体系的・整合的かつ妥当な解決策を提示することにある。 こうした目的を達成するため、平成30年度も、平成28年度および平成29年度に引き続き、①振替株式制度の法的性格および基礎的理論の解明、②先進諸外国における上場株式の取引をめぐる制度・法的ルールの比較法的検討、③実務的諸問題の洗い出しに関する研究を行った。さらに、本年度は本研究の最終年度に当たることから、本研究全体のとりまとめを行った。 より具体的には、①について、引き続き振替株式の譲渡に伴う株主地位の移転に関し、当該株主情報の振替株式発行会社への伝達手段としての総株主通知および個別株主通知の機能および発行会社の株主名簿の意義について検討した。②については、平成30年11月にアメリカ合衆国に出張し、ニューヨーク証券取引所およびブロードリッジ・フィナンシャル・インクを訪問し、インタビューおよび資料収集を行った。③については、研究代表者および分担者を含む研究会を複数回実施し、実務的な問題点につき検討を行った。 また、上記の研究のための基礎的作業として、非上場会社を含めた、株主の権利行使に関する研究を行い、その研究成果を公表した。
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