医療政策及び医療イノヴェーションとの調和的発展を指向した知的財産法制の統合的研究

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K03432
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 平嶋 竜太 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (70302792)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: パーソナライズ医療 / 医療政策 / 知的財産法制 / データ保護 / 後発医薬品

研究実績の概要

本研究は、①医療政策からの要請たる後発医薬品利用の促進と新薬開発イノヴェーション促進の調和点を実現する知的財産法制の制度設計論の模索、②パーソナライズ医療（個別化医療）分野におけるイノヴェーションへ向けた知的財産法制の理論的課題の解明と制度設計における検討項目の提示、③医薬医療分野における特許権等の知的財産権行使に伴う医療活動に対する阻害要因に対する理論的・制度的対応、という事項について理論的観点から総合的・統合的な検討を行って、医療政策及び医療イノヴェーションとの調和的発展を指向した知的財産法制に向けた一定の結論と将来的方向性を導出することを目的とするものである。
平成28年度においては、当初研究計画に沿って、①研究に必要な基礎的文献資料の収集とその充実、実務状況の調査及び情報収集②資料分析、調査内容分析、詳細検討項目の洗い出しと整理、に対応する事項を中心に行った。
具体的には、上記の研究主項目①－③に関連する文献の収集や資料分析、詳細検討項目の設定を行った。
①については、後発医薬品と延長登録後の特許権の効力範囲につき、最高裁判決をはじめ、多くの議論が生じていることから、この点に特に重点を置き、後発医薬品利用の普及と先発医薬品の開発・新薬開発イノヴェーションの促進の調和をいかにとるべきかという課題に今後取り組むべきことが認識された。
②については、パーソナライズ医療の展開普及を巡って、医療関連データの収集・集積・利用に関する法的課題という問題が新たに重要課題であることが認識されたことから、まずは至近の医療・医薬における技術的な動向・進展に関する情報収集と現時点で表面化している、あるいは直近で生じうる制度的課題を把握することに重点をおいた。
③については、知的財産法と人権・公共性といった基礎となる論点に関する文献及び情報収集に着手した状況である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画においても初年度はまず問題状況の把握と資料・情報の収集に相応の時間を要することを想定していたため、そのような観点から、ほぼ期待した情報収集と議論の検討を進められているものと評価できるといえる。

今後の研究の推進方策

今後の方策としては、当初計画にそって、さらなる情報・資料収集を行うと共に、その分析検討を本格的に進めることで、法的課題の明確化と対応に関する研究を行うことを計画している。とりわけ、今後の医療政策にとっては後発医薬品利用に比して、パーソナライズ医療の普及によるインパクトが極めて大きなものとなることが予想されることから、当初計画のなかでも、当該事項についての研究ウエイトを増加させることを予定している。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究においては、本研究課題における事項の最新の動向及び情報の収集と課題の把握に重点を置いたことから、既存の文献等を新規に購入することを最小限にとどめることができた。むしろ研究課題の先進性より刊行されている有用な文献も多くはなかったという事情も存する。他方、最新の動向や情報についてはインターネット上公開されている無料の文献情報を最大限に有効に活用することができたため、当初の研究計画と比べて使用額を抑えることが著しく可能となったため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度以降においては、より多くの関連文献等の収集や海外における動向のための出張旅費等が、当初の研究計画よりも増額することが想定される。このため、今回生じた次年度使用額については、当初計画からの増額分に充当することによって、より研究の実態に適合した効率的な予算執行が実現できることが期待される。