最終年度である2018年度の前半はフランスにおける動きを論文にまとめることに注力した。フランスにおいては、米国やフランスの図書館との協定に基づきGoogleが図書館資料の大規模な電子化事業を開始したことに危機感が示され、この状況に対応した立法が行われた。具体的には、①20世紀にフランスで出版された書籍(保護期間満了前のもの)のうち絶版等で入手が困難となった書籍のデータベースを構築する、②集中管理団体がデータベースに登録された書籍の電子出版を出版者等に許諾し、その収益を権利者に分配する、という仕組みが導入された。しかしこの仕組みの正当性が著作者の一部によって争われた結果、欧州司法裁判所の判決に基づき、同法を施行するデクレ(命令)の一部が取り消された。 2018年度の後半は、研究期間全体を通じて実施した研究の成果を論文にまとめることに費やした。Google Books事業に関する集団訴訟等で注目されたのは、これまでオプトイン(権利者が任意で利用を許諾する)が基本であった著作物等の利用許諾のあり方について、オプトアウト(禁止されない限り利用が認められる)という選択肢が示されたことである。この許諾形態は北欧の拡大集中許諾制度と多くの共通点を持つものである。Google Books訴訟に続き、欧州や米国でオプトアウト型利用許諾制度の導入を模索する様々な取組があった。上述のフランスにおける立法もその一つである。これらの動きを受け、2019年に採択された欧州デジタル単一市場著作権指令に、オプトアウト型利用許諾制度に関する規定が置かれるに至った。 オプトアウト型利用許諾制度の法的課題や日本における示唆について分析した論文を今後、公表する予定である。
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